ベルギーのレインデルス外相は20日、昨年11月のバリ同時テロに直接関与したとされるサラ・アブデスラム容疑者(26)の逮捕に関連して、大量の武器や重火器が発見されたことを明らかにした。
ベルギー当局は18日に首都ブリュッセル郊外のモレンベーク地区で急襲作戦を行い、アブデスラム容疑者ほか4人を拘束した。レインデルス外相は20日にブリュッセルで行った講演でアブデスラム容疑者について、「ブリュッセルで再び何かを始める準備を整えていた」と語った。
ブリュッセルでは同容疑者を中心とする新たなネットワークが形成され、パリ同時テロには当初考えていたよりもはるかに多くの人物がかかわっていたことも分かったとレインデルス外相は説明。「これまでに判明しただけでもパリのテロ攻撃には30人以上が関与していた。ほかにもまだいるのは間違いない」と述べている。
ベルギーのヤンボン内相によると、捜査当局は今後、アブデスラム容疑者に手を貸したネットワークの摘発に力を入れる方針。捜査はまだ終わっていないとヤンボン内相は強調し、アブデスラム容疑者を逮捕した18日の急襲作戦について、「同容疑者は欧州の外国人戦闘員の中でも最重要指名手配者だったので、大きな打撃になったとは思う。だがネットワークの全容は明らかになっておらず、我々は行動を続け、捜査を続けなければならない」と語った。
ベルギー国家治安当局トップも20日、CNN系列局VTMニュースに対し、欧州が過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の脅威にさらされている現実はまだ到底終わっていないとの見方を示し、「大勢の人物が攻撃を実行し、西側の民主主義にダメージを与える目的で西欧に向かっているらしいことも分かっている。引き続き厳重な警戒が必要だ」と強調した。
パリの同時テロでは、9人の実行犯が飲食店やコンサート会場で銃を乱射したり爆弾を爆発させるなどして130人を殺害した。アブデスラム容疑者はこの事件に直接関与した容疑者の中で唯一生き残った人物だったとされ、パリ検察によると、テロ計画に中心的な役割を果たしたのも同容疑者だった。
ベルギー連邦検察によると、アブデスラム容疑者はベルギー生まれでフランス国籍を持つ。テロ組織の活動に加わって殺人に関与した疑いが持たれているが、検察の発表ではテロ組織名には言及していない。ただ、パリ同時テロではISISが犯行を認める声明を出していた。
18日の作戦で拘束された残る4人のうち、2人はテロ行為にかかわった疑い、1人は犯罪者をかくまった疑いが持たれている。残る1人は釈放された。
アブデスラム容疑者は警備が厳重なブリュージュの刑務所で勾留されていて、捜査には協力的だという。
パリ検察はアブデスラム容疑者の身柄引き渡しを求めているが、同容疑者は争う構え。パリ検察は19日、フランスへの移送までには3カ月を要する可能性があるとの見方を示した。
パリ検察は、同時テロ当日、自爆テロ犯3人を車に乗せて事件現場のサッカースタジアム付近まで運んだのが同容疑者だったとみている。事件後にパリ市内で見つかった自爆ベルトに付着していたDNAは、同容疑者のものと一致したという。
同容疑者は調べに対し、自分もスタジアムで自爆するつもりだったが思いとどまったと供述しているという。しかし当局は、同容疑者が別の場所で自爆するつもりだった可能性もあるとみて、引き続き同容疑者を追及する方針。