台湾「国民党歴史的惨敗」の衝撃:「筆頭戦犯は馬総統」
中華民国副総統を兼任する呉敦義・国民党第一副主席は1日午前、党主席である馬英九総統に辞意を伝えた。11月29日に行われた統一地方選挙で国民党は大敗し、翌30日に台北市長を兼任する郝龍斌・党副主席が辞表を提出したばかり。また馬総統も3日に党主席の辞任を表明するとみられており、党内では混乱が続いている。
党内では、馬総統が党主席を辞任した場合、新しい党主席が決まるまでの間、第一副主席である呉敦義氏が職務を代理する予定だった。このため、呉敦義氏の辞意表明は今後の党主席人事に大きく影響することが予想される。
経済界、地方選結果受け対話促進を提言[経済]
11月29日の統一地方選挙で与党・国民党が惨敗し、馬英九政権に厳しい評価が下されたことについて、台湾の財界トップが相次ぎ工商時報に寄稿し、与野党を超えて話し合いを進めるよう提言した。
中華民国全国商業総会(商総)の頼正鎰理事長は、今年7月に開催した「国是会議」を再度開催し、国民党と最大野党の民主進歩党(民進党)のトップが話し合いに加わるよう促した。頼理事長は「2016年には総統選挙が控えている。台湾経済にとって15年が重要な1年となるだろう」との見方を示した。中国との市場開放の促進や、他国・地域との自由貿易協定(FTA)に当たる経済協力協定の推進を急がなければ台湾は国際社会で出遅れると警告する。
中華民国全国工業総会(工総)の許勝雄理事長も、与野党や財界など各界による対話を求めた。経済面で台湾の競争相手である韓国が他国・地域とのFTA締結を進めていることに危機感を示した上で「過去10年間、台湾では対立と争いが繰り返されてきた。今こそ各界が力を合わせる時だ」と強調。併せて政府には国際競争力を強化する施策の推進を求めた。
中華民国工商協進会の林伯豊理事長は、与野党が対中政策について協議するべきだと主張した。中国とのサービス貿易協定や物品協定の後続協議について「台湾が譲れない部分を先に決めておき、それ以外の部分の開放を進めればよい」と指摘。中国との交渉が進まなければ、競争相手の韓国にも出遅れ、台湾経済は「周辺化」する恐れがあると危機感を示した。
次期台北市長の柯氏、「8年後にシンガポールを超えたい」
次期台北市長の柯文哲氏は1日、メディアのインタビューに応じ、市長職を2期8年務めたい考えを示すとともに、「8年後にはシンガポールを超えたい」との目標を改めて表明した。
外科医の柯氏は、先月29日の統一地方選挙で無所属候補として初めて台北市長に当選した。この日のインタビューでは今後2~3年間、与党・国民党と最大野党・民進党によるイデオロギーの対立が続くだろうと指摘。無所属である点を生かして最初の4年間は真剣に取り組むと意気込み、部下などほかの人からの指摘にはきちんと耳を傾けると語った。
また、市民ひとりひとりの声をしっかりと受け止めて問題解決を図りたいと強調。一方、自身が財政面に弱いと認めた上で、市政会議や市議会などを通して多くの知恵を持ち寄りたいとする認識を示した。
台湾初の動画アラームアプリ、セクシーな台湾美女が目覚めをサポート
セクシーな美女が目覚めをサポートしてくれる台湾初のスマートフォン向け動画アラームアプリ「ハニーアラーム」がリリースされ、人気となっている。8月末のリリース以降、ダウンロード数は4万回を突破した。
同アプリにはタレントやネットアイドルなど10名以上の台湾美女のアラーム動画が搭載されており、起床やデートなどの使用シーンにあわせて好みの動画を選択可能。設定した時間になると、「おはよう!早く起きて!お腹すいたよ!」などと呼びかける動画が自動再生される。
また、同アプリはクーポンアプリ「Qbon」と提携しており、アラームを使用するとファストフード店や温泉旅館の優待などの各種クーポンが取得できる仕組みになっている。
クーポンの提供により、アプリの使用頻度を増加させるとともに、提携店側もオンラインから店舗への集客アップが期待できることから、「Qbon」では消費者、アプリ開発者、店舗それぞれが恩恵を受けられるのではと話している。
「アンドロイド」および「iOS」搭載の端末で利用が可能。現在のところ、日本語には対応していない。
天安門事件指導者、ウアルカイシ氏が台湾の国会議員補選に出馬へ
中国大陸で1989年に起きた天安門事件の指導者で、現在は台湾籍を持ち台中でIT関連の企業を経営するウアルカイシ氏(46)が1日、同市の立法委員(国会議員)補欠選挙に無所属で出馬する意向を示した。
補欠選挙は、台中市中区、西区、東区、南区から選出された林佳龍氏が先月29日に行われた台中市長選への出馬のため辞職したのを受け実施されるもの。
同氏は、台北市で無所属の柯文哲氏が、与党国民党の候補に大差をつけて当選したのに刺激されたという。台湾では与野党の間でイデオロギーをめぐる対立が長年にわたり続いており、さらなる民主化のために現状を突破したいとしている。
同氏は台湾女性と結婚し1996年から台湾に移住、3年後に台湾籍を取得している。有権者から台湾の代表者として認められるかとの質問に対しては「私は2人の台湾人の子供の父親で、台湾で仕事をし、納税もしており、献血も50回以上した」と語り、「このような質問は私を傷つける」と答えている。
台湾でブラックコーヒー好きが増加中 コンビニが攻勢
台湾で、昨年消費されたコーヒーは1人当たり約100杯で、市場規模は600億台湾元(約2300億円)に上った。近年ではブラックコーヒーの消費量も増えているため、ファミリーマート(全家)ではコーヒー豆の品質向上を図り、消費者を引き付けたいとしている。
店内でひきたてコーヒーを販売している同社の関係者によれば、以前はカフェラテが一番人気だったが、コーヒー自体の風味を味わいたいとする消費者の増加により、ブラックコーヒーの売り上げが前年同期比で80%近い成長をみせているという。
台湾では、ひきたてコーヒーの消費量がここ15年で4.5倍に成長。同社は、ホンジュラス産とブラジル産の豆を使用することで、消費者の好む「香り」や「甘さ」を提供し、売り上げの増加につなげたい考え。
台湾の被雇用者約4割、月収11万5千円未満 転職の条件は高収入
行政院(内閣)主計総処が発表した最新調査で、台湾に871万人いる被雇用者の今年の平均月収は3万5986台湾元(約13万7500円)で、約4割に当たる348万3000人が3万元(約11万5000円)未満だったことが分かった。台湾の複数メディアが伝えている。
今年の平均月収は前年より435元(約1700円)上昇したが、物価上昇に賃上げが追いついていないとの声が一部からは上がっている。また、今年5月の失業者は約44万3000人で、そのうち1年以上仕事に就いていない人はおよそ7万5000人と前年より1000人増加した。
一方、今年5月時点で転職を考えている被雇用者は全体の5.56%に当たる61万4000人だった。求職サイトの「1111人力銀行」が今年初めに行った調査では、転職希望者のうち44.65%が「福利厚生に不満」、43.12%が「高収入を得たい」などの理由を挙げており、77.06%が転職先に求めるものとして「待遇のよさ」と答えている。
台湾最高峰・玉山で積雪1.2センチ うっすら雪化粧
寒気団の南下により、2日朝は台湾全土で冷え込んだ。中央気象局は、台湾最高峰の玉山(3952メートル)で積雪を確認したと発表した。午前6時25分から降り始め、同9時までの積雪量は1.2センチだったという。
台北郊外の淡水では12.7度と今季最低を更新した。淡水以外にも、桃園で13.3度、宜蘭・新竹などの地域で13.5度を観測した。
気象局では、3日には一時的に暖かさを取り戻すものの、4日から5日にかけて再び寒気が流れ込み、台湾北部の平野部では13度まで下がる見込みとしている。
管理所や警察は登山客に対し、十分な備えで臨むよう呼びかけた。経験が浅い人は下山するよう注意を促している。玉山では11月14日に初雪が確認されている。
日航B777が松山空港に初着陸 放水アーチの歓迎受ける
日本航空のボーイング777-200ER型機が1日午前、台北松山空港に着陸した。同空港に777シリーズの機体が降り立つのは初めてで、到着後には放水アーチの歓迎を受けた。台湾の複数メディアが伝えている。
日台間の相互訪問者数は近年急増しており、今年1年間では過去最高の400万人を突破すると見込まれている。航空需要の増加に伴い、日航ではこの日から羽田―松山線の一部で従来機よりも大型の777による運航が始まった。
777の初飛来を一目見ようと、松山空港の展望デッキには100人近くの市民が詰めかけ、初便が滑走路に降り立つと拍手が沸いた。日航では毎日2往復のうち1往復が同機で運航されるという。
台湾と日本、ワーキング・ホリデー制度のビザ手数料免除に
外交部は1日、台湾と日本の間で実施されているワーキング・ホリデー制度の査証手数料を、免除することで合意したと発表した。
対象となるのは、台湾側では今年10月27日~31日に申請手続きを終えた申込者からで、これまで必要だった1100台湾元(約4200円)の支払いが不要となる。
双方は今年9月に年間2000人としていた受け入れ人数の上限を5000人(前・後期2500人ずつ)に引き上げている。外交部では青少年の経済的負担の軽減につながると話しており、日本の対台湾窓口機関、交流協会も若者同士の交流や相互理解がさらに促進されると期待を示している。
台湾を訪れる旅行客 明日にも900万人を突破へ
交通部観光局は1日、2014年の台湾への旅行者数が明日の午後にも900万人を突破する見通しであることを発表した。これを受けて、松山空港や桃園空港などの主要空港や港では900万人目の到着を祝うセレモニーの準備が進められている。
2014年の訪台旅行者数は、11月27日までに887万人を上回っており、過去最高を記録している。
台湾「国民党歴史的惨敗」の衝撃:「筆頭戦犯は馬総統」
民進党が「歴史的敗北」を喫した2008年の立法院選挙から6年。あのときと同様、再び、台湾のメディアは、台湾政治におけるこの地殻変動を「変天」という言葉で言い表すしかなかった。
11月29日に投開票が行われた台湾の統一地方選の結果を受け、同日夜に記者会見した馬英九総統は、「人民の声は、聞き届けた」と苦悶の表情を浮かべながら、絞り出すような言葉で、こうコメントするのが精一杯だった。
国民党主席を兼務する馬総統は数日内の党主席辞任が伝えられる。馬総統に忠実な「政策の執行長(CEO)」と目された江宜樺・行政院長(首相)はすでに辞任を表明。ほかにも国民党陣営の幹部クラスが相次いで辞表を出し、国民党は大揺れに陥っている。
翌30日の台湾の各紙の見出しには、こんな文字が躍った。
「国民党大潰走」「藍(国民党陣営を表すカラー。民進党陣営は緑)大崩壊」「人民は投票で馬英九に厳しい教訓を与えた」
そう、国民党はまさに雪崩のような負けっぷりだった。
22市・県の首長ポストのうち、民進党は選挙前の6から13に大躍進。うち、人口の7割を占める台北、新北、桃園、台中、台南、高雄の6大直轄市でみても、国民党は4市のポストを有していたが、今回、辛勝だった新北市以外の5市で敗北を喫し、ポスト数は15から6に激減。特に、国民党の地盤である事実上の首都・台北を失ったのは1994年に党内分裂で民進党の陳水扁に敗れて以来のことである。
しかも、敗れた相手が、立候補当初は泡沫扱いだった外科医で政治素人の柯文哲という無所属候補で、楽々当選と見られた国民党長老・連戦元副総統の息子・連勝文は25万票という大差をつけられてしまった。
国民党の劣勢は事前の情勢判断から明らかではあったが、ここまでとは誰も予想していなかった。事前に不利が伝えられた台北市や台中市だけでなく、国民党が有利と見られた桃園市、新竹市、嘉義市などでも民進党候補が勝ち、圧勝を期待された最大人口の新北市でも2万票差の大接戦。いろいろな意味で台湾政治の想定を超えた現象が起こり、選挙の恐ろしさに国民党は震え上がっただろう。
■大敗した「3つの理由」
国民党大敗の原因について、現状で言えるポイントはいくつかある。
最大の原因は、馬総統の不人気である。「筆頭戦犯は馬総統」という声は、すでに党内でもあちこちから上がっているが、馬政権の支持率低迷は2009年の水害対応の失敗以来、4年間も続いてきた。その間、支持率回復に有効な手を打てず、数々のスキャンダルや政策の失敗で徐々に生命力を削り取られてきた。党内の融和に背を向けて王金平・立法院長との不仲を解決しようとせず、選挙応援でも党内に一体感や明確な方向性が見られず、国民党全体を窮地に追いやった形である。
もう1つは、基本的に反国民党勢力が中心となった3月のヒマワリ運動の「成功」によって、それまではまとまりを欠いていた民進党や市民団体の反国民党陣営が結束し、勢いを得たということだ。馬政権が学生たちの要求に屈した運動の結末が敗北の導火線になったことは明らかである。
そして3つ目は、中国との関係において、一貫して「対中融和」と経済関係の強化を唱えてきた馬政権の路線に、有権者が待ったをかけたことだ。ヒマワリ運動の問題とも通じるが、対中関係の急速な進展は台湾に利益ももたらしたが、反作用として台湾が中国に飲み込まれるとの不安が広がり、対中関係により慎重な民進党に票を集める結果となった。
■総統選は五分五分の戦いに
いずれにせよ、いったん背を向けた民意を振り返らせるのは大きな難題である。台湾の有権者の志向性は、過去を振り返ってみると、およそ10年ごとに変動してきている。1990年代後半から2004年の総統選(民進党の陳水扁が勝利)までは、民進党の優勢、国民党の劣勢というトレンドであった。一方、2005年に入ってからは、陳水扁総統の資金疑惑などもあって民進党の退潮傾向が強まり、一方で、歴史的な「国共和解」を演出した国民党の声望が高まり、馬英九というスターの登場とあいまって、国民党優勢の時代が2012年の総統選までは明確だった。それがこの2014年をターニングポイントに、今後国民党は再び低迷期に入る可能性がある。
目前の政治スケジュールは、予定としては、多少時期が前後する可能性があるが、2015年末には立法院選挙、2016年初頭には総統選挙という2つの大きな選挙が控えている。残り1年あまりで国民党が立て直しを図ることは、常識的には相当に至難の技だろう。
しかも、日本の統一地方選と違って、台湾の統一地方選は国政に直結する要素が大きい。「行政中立」があまり要求されない台湾においては、市・県長のポストを握ることで動員される行政リソースは、国政選挙においても大きな得票の原動力になることはかねてから言われている。
また、得票率についてみると、民進党陣営が47%の得票率で、国民党の40%を大幅に上回った。親・民進党である無所属候補の台北市の分を加えればゆうに5割を超える。今後はこの数字を下地に総統選の動向が占われていくが、国民党は政権喪失を目前の現実として受け止めざるを得ない状況であり、逆に言うと、民進党の政権復帰がぐっと現実味を帯びた。ただ、組織力や地方議員の数など地力の面では国民党はなお民進党を上回っており、これで五分五分の戦いになったと見ておく方がいいだろう。
■民進党は「蔡英文」体制か
それでは、この統一地方選の結果は、これからの台湾政治にどのような影響を及ぼしていくのだろうか。これから短・中期的に予想される事態をいくつか並べてみる。
・ 党主席として選挙に敗北を喫した馬総統は、後継指名を含めて、「馬英九後」に向けた発言権を大いに弱めた。支持率回復は絶望的で、今後は対中関係を含めて、重要政策の遂行はまず難しくなった。
・ 国民党の総統候補選考は今後、この選挙でかろうじて生き残った朱立倫・新北市長と、無傷で力を温存してきている呉敦義・副総統の2人を軸に進んでいく。下馬評に上がっていた江・行政院長はこの辞任でレースから外れた。馬総統の党主席辞任などに伴う求心力・発言力の喪失によって、今後の党内選考がもつれる可能性もある。
・ これまで改善局面にあった中台関係は今後調整期に入り、現状よりマイナスになることはないだろうが、当面進展も期待できない。また中国も台湾と距離を置き、次の総統が決まるまでは「観察」を基軸とする対応になるだろう。
・ 民進党の総統候補は今回の選挙で党主席として勝利を導いた蔡英文になる蓋然性が高まった。もちろん今回の選挙で圧勝した台南市の頼清徳市長や高雄市の陳菊市長などの名前は上がるだろうが、蔡氏のこの選挙での的確な戦略立案や精力的な選挙応援が評価されており、今後は将来の組閣も睨んだ「チーム蔡」の体制構築を含めた総統選への準備が焦点になりそうだ。
台湾で吹き上がる「反中感情」より強烈なもの
11月29日に投開票が行われた台湾の統一地方選は、馬英九総統率いる国民党が総崩れとも言える歴史的敗北となり、強い衝撃が広がった。「表の敗者」はもちろん国民党なのだが、国民党と長く蜜月を続けてきた中国政府が「裏の敗者」ではないかという問いが、否が応でも浮かんでくる。
今回の選挙結果を、習近平・総書記をはじめ、中国の指導者たちは暗い気持ちで受け止めたに違いない。あるいは、これまで丁寧に積み木を組むように築き上げてきた中台関係の土台が、一度の選挙でガラガラと崩れてしまったような徒労感に襲われたのだろうか。
■ 「投票の動機は、単なる反中じゃない」
彼らが思い浮かべるフレーズは想像がつく。「だから民主主義(あるいは選挙)は恐ろしい」だろう。香港雨傘運動の引き金となった香港特別行政長官選挙に民主的な「普通選挙」を与えなかった自分たちの判断を、改めて「やはり我々は正しかった」と再確認し、胸をなで下ろしたかもしれない。
そんなことをあれやこれやと想像していた29日の深夜、台湾の政府機構で働く高官の女性から、私にこんなメールが送られてきた。
「外国の人たちは、これで台湾は反中になったなんて単純に思わないで欲しい。私たちの投票の主な動機は反中じゃないの。反馬(反馬英九)なのよ。でも、台湾に選挙があって本当に良かったとも思う。台湾の将来を決めるのに、人民が主役になれるということが証明されたわけだから。これこそが老共(中国共産党)がいちばん恐れていることなのよ」
確かに、彼女の言うとおりなのだ。
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台湾の人々は、反中のために国民党を負けさせたわけではない。人気の著しい低迷が続いていた馬英九政権にとって「対中関係の改善」はほぼ唯一、世論調査でも7~8割の人々が「評価する」と回答する項目である。台湾経済の対中依存度は日本の比ではない。中国は台湾企業の生産現場であり、市場であり、「飯の種」だ。そんな中国とケンカばかりしている民進党を嫌ったからこそ、2008年の総統選で台湾の有権者は馬総統を選んだのだった。
しかし、台湾の人々が無条件に中国を歓迎していると考えたら、それは間違いだ。中国の一党独裁政治体制への恐怖感、言論や人権弾圧への嫌悪感、中国経済に飲み込まれてしまう不安感。これらは台湾社会に根強く広がっている。何より、中国と台湾は60年以上に及んだ分断の末、中国は台湾の人々にとって「他者」になり、一方で「中国は台湾の一部」として将来の「統一」を求める中国とは、あくまで未来へのビジョンを共有していない。
中国の政策決定レベルではその点に気づいている人も少なくなく、台湾へのアプローチは、丁寧に、丁寧に進めてきたはずだった。しかし逆に、馬総統のほうが急ぎすぎてしまった感がある。馬政権の失敗は、中国とは「付かず離れず」でいることを最善とするデリケートな台湾人の対中観に反するように、中国との関係深化を性急に進めようとしたところにあった。
■ 実を結ばなかった中国政府の労力
馬総統は、今年11月の北京APECに出席し、習・総書記との「歴史的会談」の実現を“執拗に”求めた。しかし、馬総統の足元が固まっていないことを見透かされ、中国側に「国際会議の場はふさわしくない」と拒絶されてしまう。また、3月には中国とのサービス貿易協定を立法院で強引に審議させ、「ヒマワリ学生運動」を引き起こしてしまう致命的ミスも犯した。
もちろん、今回の選挙における国民党の敗北の要因は複合的なものだ。最大の原因は馬総統自身の不人気であり、それが国民党全体に累を及ぼしたことは確かで、国民党の幹部たちからは大っぴらに「筆頭戦犯は馬総統」という声が上がっている。最初に高い人気と期待で登場した分、失望の落差が激しくなるのはオバマ米大統領と似ている。
また日本と同様、台湾でも中間層と呼ばれる特定の支持政党意識が弱い若者が増えており、長く続く国民党の天下に嫌気が指した気まぐれな世論が民進党に流れた部分もあっただろう。
ただはっきり言えるのは、これまで、「親中国」勢力を育成するために、国民党に対して、陰に陽に支援の手を差し伸べてきた中国の努力が、今回の選挙ではほぼ役に立たなかった、という現実であろう。
象徴的な例として、今回の選挙において、国民党の劣勢を救うために選挙戦終盤にフル回転し、「国民党が負ければ中国との関係が悪くなる」と叫び続けた2人の大物がいた。1人は、国民党の名誉主席で元副総統の連戦だ。彼は2005年に訪中して胡錦濤氏と歴史的な国民党と共産党の「国共和解」を成し遂げ、その後は台湾政界における中国とのパイプ役として重用され、中国の指導者に会うためには連戦を通さないと会えない、とまで言われていた。
そしてもう1人は、台湾企業「ホンハイ」の郭台銘会長だ。中国国内に巨大工場をいくつも有し、iPhoneやノートPCなどの生産を大量に請け負い、世界最大のOEM企業として15兆円に迫る年間売上高を稼ぎ出している。彼の共産党首脳との太いパイプはよく知られており、中国市場の安価な労働力を存分に活用できる特権的地位が与えられてきた。
しかし、政治、経済の両輪とも言えるこの2人の危機感あふれるアピールにも、台湾の有権者は反応しないどころか、かえって「中国の手先がまた何かを言っている」という冷淡な受け止め方が目立った。
つまり、たとえ中国が台湾の政治・経済エリートを利益絡みでいかに取り込んで「親中派」勢力を巧みに作り上げていったとしても、このような全国規模の民主主義的な選挙に与える影響力は限定されることが証明されたのである。要するに「カネで人の心は買えない」ということであろう。
これこそが、台湾における直接選挙の最大の意義であろう。この民意という「最強の盾」がある以上、中国がいかに経済力や軍事力の規模において台湾を圧倒したとしても、台湾の人々の意思に反して台湾を中国のものとすることはできないのである。
■ 中国の描く「シナリオ」はつまずいた
このことは、習近平指導部にとって極めてやっかいな課題を突きつけている。昨今、習指導部は「中華民族の偉大なる復興」を国家目標に掲げている。「復興」が目指すのは中国の領土が最大化した清朝末期の状態であり、日清戦争で日本に奪われた台湾や、アヘン戦争で英国に奪われた香港が「中国の大きな懐」に円満に復帰することが欠かせないパーツであると見られるからだ。
しかしながら、この半年ほどの間に起きたことは「偉大なる復興」とは正反対の方向の出来事ばかりであった。3月には台湾で中国とのサービス貿易協定に反対した学生・民衆が立法院を占拠する「ヒマワリ学生運動」が起き、8月には香港で中国に抗議する「雨傘運動」が勃発して香港中心部が長期間にわたって占拠された。そして、この台湾での「変天」(世の中が変わる)と呼ばれるほどの国民党の大敗北。
これらの一連の事態を、単純に反中行動と解釈するべきではない。それよりもむしろ、自らの未来を自らが決定する「自決」を求める人々の欲求とつながっており、中国が信奉する共産党独裁のエリート統治システムという価値観そのものに対する拒絶に等しいので、単純な反中感情よりも、実のところ、はるかにやっかいで根の深いものであると思える。
2008年の馬英九政権の誕生以来、雪解けと関係強化が進んできた中台関係は、この選挙によって停滞期に入ることになるだろう。少なくとも、2016年の次期台湾総統選まで、中国は身動きが取れなくなったわけだ。その間、中国は中国と距離を置く民進党政権の誕生に備えて、新しい台湾政策を練り直さねばならない。それはとりもなおさず、国民党への強いサポートによって、中台関係の果実を台湾社会に実感させ、「国民党の一人勝ちの長期化→中台関係の安定化と緊密化による中台一体化→統一へのスムーズな移行」という中国のシナリオのつまずきを意味する。
次期台湾総統選の結果を見ない限り、そのシナリオが完全に破綻したとは即断はできないが、少なくとも、今回の選挙の「裏の敗者」が中国であることは間違いないだろう。
台湾の女子高校生が被写体の写真集 発売 | Fashionsnap.com
女子高校生をフェティッシュな視点で切り取り、映画化もされたベストセラー『スクールガール ・コンプレックス』シリーズをはじめ、女の子を被写体にした数多くの作品や写真集を発表してきた写真家・青山裕企。同人物による新作写真集『台湾可愛 Taiwan Kawaii School Girl』が、12月10日(水)、美術出版社より刊行される。
今回の写真集ではタイトル通り、日本では失われつつある女の子の素朴な輝きを求めて、台湾の女子高校生たちを被写体として設定。『女子高校生 制服総選挙』が開催され、個性的なデザインの制服も次々登場している台湾では、制服美少女ブームが到来中であり、40万票以上を集めたという制服総選挙は、日本でもインターネットを中心に話題を呼んだばかり。
そんな台湾の女子高生の中から、今回の写真集には現地でも話題の制服美少女16人が日本初登場。発売にあわせて個展やトークイベントも開催されるそうなので、ファッションと女の子を愛するEYESCREAM.JP読者諸君も、飾らない「カワイイ(可愛)」にあふれた「台湾可愛」を様々な角度から堪能してみてはいかがだろうか。
【『台湾可愛 Taiwan Kawaii School Girl』】
2014年12月10日(水)発売
青山裕企・著
美術出版社・刊
仕様:B5 判変形 総136 ページ カラー
価格:2000 円 + 税
「孤独のグルメ」台湾でドラマ化 大ヒットの“夜食テロ”
スポニチ本紙で異色のグルメ連載「全国ジャケ食いグルメ図鑑」を執筆中の久住昌之さん(56)原作の人気漫画「孤独のグルメ」が、台湾でドラマ化されることになった。
「孤独のグルメ」は久住さん原作、谷口ジローさん(67)作画で1994年に連載開始。これまでにフランス、イタリア、スペイン、ブラジルなど世界6カ国で出版され、来年1月から台湾でも発売予定。テレビ東京の深夜枠で2012年に松重豊(51)主演で始まったドラマは、深夜には禁断の“メシもの”作品であるため「夜食テロ」と呼ばれ、今夏の最新シリーズもヒットした。
台湾版ドラマも、中年男がひとりでメシを食っているだけの世界観を踏襲するとみられる。映像化契約を既に済ませていることから、現地の俳優を起用して来年中に制作することになりそうだ。
日本国内では、今夏の最新作「孤独のグルメSeason4」のDVDが来月17日に発売されることが決定。これに先駆け、ドラマのサントラ盤が同13日に地底レコードから発売される。
収録される劇伴(ドラマの劇中音楽)36曲は全て、ミュージシャンでもある久住さんが率いるバンド「スクリーントーンズ」の作品。発売日には東京・青山CAYで記念ライブを開催する。ドラマで紹介された「わさび丼」などの食事も出てくるようで、久住さんは「僕は漫画家としてデビューする前に、小劇団の劇伴をやっていたのが原点。特に今回は名曲ぞ ろい。全てJASRACに登録しな いフリー楽曲なので、みんなで自由 に使ってほしい」と話している。