日本人運転手と中国人ガイドの違い(1/2)=「ツアー客から万雷の拍手が送られた」―訪日中国人
中国のインターネット上に、夏に1週間のツアー旅行で日本を訪れたという教育学者・熊丙奇(シオン・ビンチー)氏の文章が掲載された。以下はその概要。
成田空港まで随行した上海のガイドは、現地で私たちを別のガイドに預けた。日本で永住権を取得した30歳手前の中国籍の男性だった。
私たち一行は観光バスを借り切っていた。日本人の運転手は、最初の3日間は同じ人だったが、最後の日は別の仕事があるということだった。3日目の仕事を終えたとき、バスに乗ったツアー客から彼に万雷の拍手が送られた。彼は笑顔で会釈しただけで、すぐにいつもと同じようにバスを降り、トランクから30人分の荷物を慣れた手つきで運び出した。その日は暑かったので、トランクの中はよりこたえただろう。スーツケースの中の洋服が熱くなっていたほどだ。
この光景は、バスに乗っていたすべての人の記憶に深く刻まれた。この3日間、私たちが朝出発するときには、彼はすでに準備を整え、トランクの中でしゃがんで私たちが荷物を渡すのを待っていた。
3日目の京都でのこと、私が昼食を早めに食べ終えて外に出ると、遠くにいた彼は猛スピードで走ってきて、バスのドアを開けてくれた。午後、ツアーの中の一人がスーツケースから傘を取り出したいと言い、彼はほぼすべての荷物を出さなければならなかった。荷物をすべて元に戻し終えたとき、彼は汗びっしょりだったが、いつも通りほほ笑んでいた。
彼のプロ意識について話すことに、ガイドは不満げだった。運転手は日本では地位が高くないという。われわれの中国の同胞(ガイド)は自分のことを、「会社で最高のガイドで、日本で生活して15年になるが、中国籍を捨てようと考えたことは一度もない」と自己紹介したが、彼への拍手は日本人の運転手に送られた拍手よりもずっと小さかった。
日本人運転手と中国人ガイドの違い(2/2)=「私はクッキーで間に合わせないといけないんですよ」―訪日中国人
日本に到着して2日目のこと。東京から箱根に移動する途中で渋滞に捕まった。すべての観光地を巡ってバスに乗ったときには午後6時。そこから宿泊予定の愛知県の温泉旅館には、まだ3時間ほどのバス移動が待っている。ガイドは、渋滞で遅延しているため、1500円を返却するので夕食は自分で済ませてほしいと言った。自分で済ませるのは良いとしても、不慣れな土地にいる観光客に対して、ガイドはどうしてこういう態度をとるのだろう。彼は、「あなたたちの代表者が、観光地をすべて回りたいと言ったから夕食の時間がなくなったんです。自分たちで済ませるのは当然でしょう」と言った。
私たちの要求で、途中のサービスエリアで食事をすることになった。全員が食事を終え、バスに乗ろうとしたとき、ガイドは「お腹いっぱいになりましたか?」という言葉の後に間髪入れずに「私はクッキーで間に合わせないといけないんですよ」と、まるで寝る間も惜しんでみんなのために働いているかのような口ぶりで言った。私たちが食事をしているとき、特に忙しそうにしていなかったにもかかわらずである。
ホテルに着くたびに、ガイドは私たちを尻目にさっさとカギを受け取って自分の部屋に入っていく。デパートで買い物しているとき、何を買うのがよいか彼に相談した。実際は、彼に通訳してほしかったのだが、彼は「余計なことを言ったら、会社にクレームが来て面倒だから」と断り、「入り口で旗を持って待ってますから」と言い残して行ってしまった。どこに行ってもこんな調子で、「日本でははやってない」という理由で観光地の説明もしてくれなかった。
彼は確かに何の問題も起こしていないし、規則どおりに仕事をこなしているのだろう。しかし私たちはどうにも不満だった。彼は会社の中で最高のガイドなのだろう。日本で15年生活して、“日本通”でも“中国通”でもある人は多くはない。彼は日本で規範やルール順守を学んだのだろうが、真のプロ意識は学んでいない。あの日本人の運転手に比べて、少しも真心が感じられないからだ。彼は、「自分は中国国籍を捨てたりはしない」と言った時、「人の視点や考え方は若いときに形成されるもので、変えるのは難しい」とも言った。私は、それは良いことにも悪いことにも言えると思う。今後の環境の中でも、それを変えるのはきっと難しいだろう。