「簡体字はキモい」 香港で渦巻く“中国本土化への嫌悪感”
「このメニュー、どうしてサラダのこと『色拉』と書いているの?」。香港のコーヒーショップで客の女性はムッとした様子。店員に「ここは大陸(中国本土)じゃないわ。香港なのよ。香港なら『沙律』でしょ。それにメニューの漢字はどれも簡体字よ。香港人なら繁体字で書きなさいよ!」と食ってかかった。
香港で昨年開局した民主派寄りのテレビ局HKTVが放送したドラマのひとコマだ。「簡体字」は中国で1950年代に制定された簡略漢字、「繁体字(正体字)」は伝統的な漢字をさす。「サラダ」など外来語では、同じ単語でも違う漢字を当てることが多い。
「本土化」へのいらだち
香港や台湾では、学校教育から社会生活、公文書に至るまで繁体字が使われているが、観光客急増など中国本土からの影響拡大で中国本土風の表現や、簡体字がじわじわと浸食し始めている。ドラマの女性は“中国本土化”に対する香港人のいらだちを表現した。
今年2月には香港でちょっとした騒動もあった。民主派寄り香港紙、蘋果(りんご)日報によると、香港警察当局が公表した市民向け刊行物の中に、随所に簡体字が混じっており、香港のネット上で、「香港警察は中国本土から指示された簡体字の文書を下書きにした」「香港は中国公安に牛耳られている」「簡体字は見ていてキモい」などと炎上した。