韓国国内で高齢者の親に対する実子の虐待事件が増加していることを紹介したうえで、韓国社会を貫く「孝道」の倫理が崩壊しつつある背景について論じた記事を掲載した。
記事はまず、精神疾患の70代女性が息子から長期的に虐待を受け、年金などを持ち去られた案件、20代の求職中の女性がストレスから病気の父親に暴力をふるう案件、70歳あまりの父親に小言を言われて腹を立てた息子が刃物を向ける案件を挙げ、「近年、韓国では高齢者の虐待問題が日増しに深刻になっている」とした。
また、6日にソウル市で発表された高齢者虐待調査によって、昨年同市内で発生した976件の虐待案件中、半数以上が子女による父母虐待であることが判明したとする韓国メディアの報道を紹介。「かつての虐待は掴みかかる程度だったが、現在は骨折させたり凶器を使ったりというレベルまでエスカレートしている」とする関係者の話を伝えた。
そのうえで、韓国で高齢者虐待が増えた背景について、アルコール依存症や精神疾患患者の増加のほかに「金銭が万能と思われ、人びとが物質化を追求する時代において、経済的な圧力が高齢者への身体的、経済的虐待を助長している」とするソウル市福祉健康部長の見解を紹介した。
記事は、韓国の青年が中国同様、西洋人のように成人後に独立せず、両親に依存する傾向があると指摘。年月の経過とともに逆に子が親の面倒を見ることになるが、経済が低迷する現状では若い人にとって大きな負担となり、ストレスがトラブルが頻繁に発生して虐待につながると解説した。
さらに、虐待される高齢者が「寛容」であることも問題を深刻化している一員であるとし、大部分の案件が家庭内部で発生し、多くの高齢者が黙ってこの状況を受け入れてしまっていると分析。たとえ事態がエスカレートして通報したとしても、自分の息子や娘、家族が懲罰を受けることを望まないという「寛容さ」が、加害者の意気を助長しているとした。
警察によると、被害者が加害者の処罰を認めないことで処分がうやむやになるが、処罰を受けなかった加害者がその後すぐに再び虐待行為に及ぶ事例が多々あるという。記事は、高齢者虐待を予防するには既存の制度を改善して処罰を強化するとともに、お年寄りに対する社会の関心を高める必要があるとの専門家の意見を伝えた。