日本では今年も春節(旧正月)や清明節(お盆)の休暇での中国人による「爆買い」が話題になったが、フランスではここ数日、中国の一企業による爆買いならぬ「爆社員旅行」がメディアの注目を集めた。一行6400人は、パリと地中海沿岸のコート・ダジュールにある観光・保養都市ニースで2日ずつ滞在。2都市での出費は、宿泊費も含めて40億円超とみられており、不況のフランスにとっては何とも気前のいい話だった。
ホテルは四つ星以上
史上最大規模とみられる社員旅行を挙行したのは、天津に本部を置く「ティエンズ」社。バイオテクノロジー産業を基幹に、金融、観光、物流、不動産、教育など幅広い事業を手がける複合企業で、現CEO(最高経営責任者)の李金元氏(56)が1995年に創業した。従業員数は約1万2000人で、創業20周年記念行事を兼ねた今回の社員旅行には半数以上が参加した。
一行は5日にパリ入りして2泊。7日にニースに移ってここでも2泊した。パリでは李CEOが6日にローラン・ファビウス外相(68)を表敬訪問。こうした経緯もあって、仏外務省は7日、ティエンズの一行がパリで140軒ものホテルに予約を入れ、滞在していたことを報道官が広報した。
社員たちはルーブル美術館などの観光地を訪問する一方、得意の爆買いも行い、仏紙パリジャンは、パリでは1300万ユーロ(約17億4000万円)を出費したと推計している。
フランス通信(AFP)によると、ニースでは近隣のカンヌやモンテカルロも含めていずれも四つ星以上の高級ホテル79軒で4760室を予約。社員の移動には146台の大型バスが使用されたという。
人文字でギネス認定
さらにニースでは、ギネス世界記録の更新にも挑戦した。海沿いの遊歩道「プロムナード・デ・ザングレ」に6400人全員が集結して英語で「コート・ダジュールのニースはティエンズの夢」という人文字を作成。上空から読み取れる人文字としては世界最長の語句であるとの認定を受け、新記録達成を宣言した。
AFPの推計では、ニースでの滞在中には2000万ユーロ(約26億8000万円)が使われたとみられている。
高級ブランド人気
李CEOは、米経済誌「フォーブス」が発表する個人資産10億ドル(約1200億円)以上の世界長者番付に載ったこともある大富豪。今回の社員旅行の意図について仏メディアに「従業員の慰安というだけでなく、経済的にも見返りがある旅行だと思っている。気持ちがリフレッシュされ、士気も高まれば、いいアイデアを生み、生産効率も高めてくれると思う」などと話している。
フランスは、年間約8500万人の外国人が訪れる世界一の観光大国。観光関連の国内総生産(GDP)は1500億ユーロ(約20兆1000億円)に及び、全GDPのほぼ7%を占めている。従来、中国人観光客はそんなに多くなかったが、近年の経済力伸長を反映してここ数年は急増。昨年は中国人観光客が200万人を超えたとみられている。フランスでも日本同様、中国人の爆買いは有名だが、売れ筋は異なる。日本では(1)洗浄機能付き便座(2)炊飯器(3)セラミック包丁(4)保温機能付きステンレス水筒…などが人気だが、日本訪問者よりも所得水準が高いフランス訪問者たちは、もっぱら高級ブランド品や化粧品を買いあさっているという。