韓国・仁川(インチョン)市内のキャンプ場で今年3月下旬、テントが燃え、中にいた子供3人を含む5人が死亡する火事が起きた。円錐(えんすい)形の大型テントが1分足らずの間に炎に包まれる様子を、近くの防犯カメラが写し出していた。韓国メディアの報道によると、地元警察はテント内の冷蔵庫とテレビ周辺が火元で、出火原因は漏電など電気的要因とみている。テント内には床暖房も完備されていたという。テント内に大型家電製品が備えられていたとは、一体どんなテントだったのか?
テント内に冷蔵庫やテレビが設置されていることに驚く人もいるかもしれないが、実は韓国や欧米では、こうした大型家電製品を備えたぜいたくなキャンピングスタイル「グランピング」が流行しているという。グランピングは、「Glamorous(魅力的な) Camping(キャンプ)」の合成語だ。
自然環境の中ではの開放感を体感しながら、高級ホテル並みの快適さも同時に味わえるのが特徴という。テント内にはエアコンやソファなどのほか、中にはバスルームやベッドが備えられている施設もある。ネットで調べてみると、簡易なテントというより布製の小屋といったイメージのものまであった。
韓国ではアウトドアブームに乗り、こうしたグランピング場が全国各地にできている。しかし「グランピングは火に弱いテントの中に各種の電化製品が入るため火災が発生する可能性が大きいが、これに対する安全規制が厳しくないため民間業者も次々と設置している」(韓国紙「中央日報」電子版)といった問題点も指摘されている。
仁川のキャンプ場の火災でも、テントの素材が可燃性だったとみられているほか、出火当時、消火器が作動しなかったとの証言もあり、防火対策に問題がなかったかについても当局が調べているという。
中央日報によると、韓国全土にある1800カ所ほどのキャンプ場のうち登録されているのは約230カ所に過ぎず、一部の民間業者は浸水や土砂崩れの危険がある場所にキャンプ場を設置するケースもあるという。
また韓国国内のキャンプ人口は今年、最大300万人を超えると予想され、キャンプ産業も昨年は6000億ウォン(約650億円)台と、2008年(700億ウォン)に比べ9倍近く増加した。
韓国全羅北道完州では今夏、国際キャンピング・キャラバニング・オートキャラバニング連盟(FICC、1932年設立、本部ベルギー・ブリュッセル)主催の「第83回FICC世界キャンプ大会」が開催される予定で、加盟する38カ国から約2万人の参加が見込まれる。
中央日報は「韓国キャンプ場惨事…これで世界キャンプ大会を開催できるのか」と題した社説の中で、「国内キャンプの規模と熱気は世界的レベルだ。これにふさわしい高い市民精神と安全システムの拡充が伴わなければいけない時期だ」と警鐘を鳴らす。