ケリー米国務長官が、韓国に異例の圧力をかけた。訪問中のソウルで、朴槿恵(パク・クネ)大統領や、尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と会談し、冷え込んだ日韓関係の改善を強く促したのだ。ただ、韓国側は「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録阻止に動くなど、「反日」攻勢を緩めておらず、今後、同盟国・米国の逆鱗に触れかねない状況だ。
「日韓両国が敏感な歴史問題に自制心をもって対処し、直接対話を継続しつつ、互いが受け入れられる解決策を見いだすことを望む」
ケリー氏は18日、尹氏との米韓外相会談後、共同記者会見でこう語った。日韓双方に関係改善を促した形だが、発言の場所や経緯を考えると、事実上、韓国に「外交圧力」をかけたといえる。
オバマ米大統領は昨年3月、日米韓首脳会談を主催して、日韓両国の歩み寄りを迫ったが、朴氏率いる韓国の「反日」姿勢は変わらなかった。最近では、米国が称賛した安倍晋三首相の米上下両院合同会議での演説と、「明治日本の産業革命遺産」を世界文化遺産に推薦しようとする日本政府の行動に、韓国国会が難クセといえる糾弾・非難決議を採択している。
さらに、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発を進めるなか、韓国が、中国の反発を恐れて、米国が望む弾道ミサイル迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の配備を躊躇(ちゅうちょ)していることも許せないとみられる。
ただ、韓国に外交圧力が効いたかは疑問だ。
韓国・聯合ニュース(日本語版)は18日、ケリー氏の発言について、「問題解決のためには日本の努力が必要であることをあらためて表明したと受け止められる」との記事を配信するなど、ノー天気に日本に責任転嫁している。
こうしたなか、日本政府も世界遺産問題で反撃に転じた。ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会委員国に、副大臣や政務官を事実上の「首相特使」として派遣し、世界遺産登録支持の働きかけを強めているのだ。韓国や中国の歴史問題を絡めた策謀を阻止する狙いという。
韓国情勢に精通するジャーナリストの室谷克実氏は「ケリー氏が外交圧力をかけても、韓国の反日攻勢は簡単には収まらないだろう。日本としては冷静に証拠を示して、諸外国に事実を訴えていくしかない。首相特使の派遣はいいアイデアだ。安倍首相の就任2年半で、オバマ政権も日韓関係の真実がやっと分かってきた。最後には正義が勝つ」と語っている。