多くのタイ人観光客が鎌倉を訪れる理由
現在政府は、2020年の訪日外国人旅行者2000万人到達に向けて様々な訪日施策を講じており、訪日外国人の来訪者数も過去最高を更新し続けている。このような状況の中で、国や都道府県だけでなく市区町村でも来訪促進施策、滞在環境の改善に乗り出しているが、市区町村単位では、来訪している外国人について得られるデータが少ないのが現状だ。株式会社インテージリサーチは、自主企画調査として携帯電話のローミング情報を使った訪日外国人滞在の実態を分析を行なった。この分析は、2014年11月に訪日した外国人の滞在場所を、居住国別、時間帯別に分析地域ごとにまとめたもの。
分析の結果、エリアによって来訪する国の違いがわかった。中央区は中国、台東区は台湾。鎌倉市ではタイが多く、「東京に近く、大仏がある」ことが理由と考えられる。また、時間帯別の変化を見ると、台東区は、中国からの来訪者にとっては「昼間訪れる場所」、台湾からの来訪者にとっては「宿泊場所」と推測される。
■地域によって来訪している外国人の国には特徴がある
訪日外国人の立ち寄り地を確認できる「訪日外国人消費動向調査(観光庁)」によれば、東京・神奈川に立ち寄ったと回答した回答者は中国が32.1%、韓国が12.1%、台湾が10.4%と中国が圧倒的であるのに対し、今回の分析で地域別に滞在人口量を見ると、中国は中央区では昼間滞在人口の19.9%で最も多くを占めているが、台東区での割合は18.4%、渋谷区での割合は10.0%だった。一方、台東区では台湾が21.1%、渋谷区では同じく台湾が16.9%、また鎌倉市ではタイが33.9%など、地域によって滞在する国に特徴があることがわかった。
これは、観光資源の違いによるものと推測される。このデータについて、INTAGE (Thailand) Co., Ltd.にヒアリングした結果、「タイでは、定期的にお寺に行く習慣があり、日本の仏教に興味がある」、「数あるお寺の中でも大仏があり、東京から近い鎌倉が選ばれているのではないか」ということが考えられる。
また、台東区を例に『時間帯別滞在人口』をみると、お昼時間(13時)に向けて滞在人口が増え、19時時点で減少した後に、0時時点で再度多くなることがわかった。これを国別にみると、韓国は全体とほぼ同様の傾向となっているが、中国では13時時点、台湾では0時時点の来訪人数が最も多いなど、国によって来訪状況が異なることがわかった。