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「空港アクセス戦争」はこんなに過熱していた

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成田国際空港と関西国際空港。日本を代表する東西の2大空港を舞台に、鉄道各社のシェア争いが激しさを増している。

 東の成田空港では、アクセス手段として最も利用者が多いのが鉄道で、全利用者の42%を占めている。これに空港バス(21%)、自家用車(20%)が続く格好だ。

 鉄道では、1991年にJR東日本と京成電鉄が乗り入れを開始。以来、「成田エクスプレス」「京成スカイライナー」という看板特急を導入して、しのぎを削っている。両者のシェアはほぼ互角。ただ、特急料金のかからない列車も含めると、京成のシェアがJR東日本を上回る。

■ 京成は料金、JRは広域性に強み

 京成は日暮里―空港第2ビル間を36分で結ぶスカイライナーのほか、所要時間は1時間程度かかるものの特急料金の不要なアクセス特急や快速特急が、割安さを武器に利用者を集めている。

 一方、JR東日本の成田エクスプレスは、都内のみならず大宮や横浜の発着もあることから、首都圏の幅広いエリアから乗客を集めている。ただ、東京駅から成田空港まで1時間半程度かかることに加え、料金がスカイライナーより割高というデメリットがある。


 成田空港では、22年ぶりの新ターミナルとなる第3ターミナルが4月8日に稼働したのをきっかけに、数多くのLCC(格安航空会社)が新たに就航している。京成は「グループ会社が運営しているバスも加え、多様なアクセス手段を提供することで、LCCの乗客に利用していただきたい」と意気込む。
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 だが、LCCの利用客は価格に敏感だ。割高なスカイライナーが敬遠されることはないのか。


 こうした見方について、京成電鉄の担当者は「LCC利用客がアクセス手段についても割安感を求めるという捉え方はしていない」と話す。価格ではなく利便性を高めることで、LCC利用客を取り込む構えだ。京成が昨年11月に行ったダイヤ改正からはこの傾向がはっきりと浮かび上がる。

 まず、上り始発スカイライナーの成田出発時刻を8時台から7時台に繰り上げた。早朝に成田空港に到着する便の多いLCC乗客の獲得を狙ったものだ。一方、下りの最終イブニングライナーは京成上野発車時刻を22時00分から23時00分に繰り下げた。成田空港着は24時10分で、翌朝のLCC早朝便の利用者に対応した。


 ライバルである成田エクスプレスの上り始発は7時44分、快速エアポート成田の下り到着時刻は22時47分。京成が一歩リードしたといってよい。

■ JRが外国人に人気なワケ

 スカイライナーと成田エクスプレスを比較すると、前述のとおり、シェアはほぼ互角だが、外国人だけで比較すると成田エクスプレスの利用者のほうが多い。この理由は、「ジャパンレールパス」など外国人専用のJRパスを使えば、成田エクスプレスに無料で乗れるためだ。

 そこで京成は、東京メトロや東京都交通局と組み、地下鉄が1~3日間乗り放題となる切符にスカイライナーの往復乗車券を組み合わせた「京成スカイライナー & 東京サブウェイ・チケット」の販売を昨年7月から開始している。

 さらに、春秋航空、バニラエア、ピーチ・アビエーション、エアアジアXといったLCCの機内で「スカイライナーバリューチケット」も販売している。成田空港に到着した外国人客の中には、JRと京成のどちらを利用したらよいか迷う人もいるだろう。だったら「到着前に売ってしまえ」という戦略だ。2470円のスカイライナー料金が2200円に割引になるというメリットもある。

 次々と手を打つ京成に対して、JR東日本は成田エクスプレスに往復割引切符を導入し、さらに空いている指定席があれば事前の指定なしに座れる「座席未指定券」という制度を導入した。両社のサービス合戦は激しさを増す一方だ。

1994年に開港した西日本のハブ空港・関西空港でも、JRと私鉄のシェア争いは繰り広げられている。

 関空の鉄道アクセスを担うのはJR西日本と南海電鉄の2社。JR西日本は「はるか」、南海は「ラピート」という空港特急列車を投入し、客の奪い合いに躍起だ。

 両社の空港アクセス輸送人員を比較すると、JR西日本が一歩リードしている。南海は料金こそ安いのだが、終点が大阪ミナミの玄関口であるなんばで、そこから先は他社線に乗り換える必要があるのがネックだ。

 一方のJR西日本は、京都など他都市との間を直通で結んでいるという強みがある。人気のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)への乗り換え移動も簡単で、「USJがお目当ての人はJRを使うのではないか」と見る関係者も多い。成田エクスプレス同様、JRが乗り放題となる外国人向けのジャパンレールパスも輸送人員増に一役買っている。

 ところが、近年になって南海が巻き返しに動き出した。関空─なんば間の割引切符と交換できる引換券を2012年3月からピーチの機内で販売。開始時期は京成のスカイライナーバリューチケットより1年以上早く、南海のほうが本家といえる。この切符は2013年度に9万6000枚を売り上げるヒット商品となった。

 LCC向けのPR展開もぬかりない。昨年9月には、ラピートの一部編成の色をピーチの機体と同じ白とピンクに塗り替えた。こうした戦略を取ることで、「LCCなら南海」というイメージ醸成につなげていく戦略だ。

■ 関空バスでは南海が優位

 さらに視野を広げると、空港アクセスバスの台頭も著しい。

 首都圏の空港バスといえば、白地にオレンジの塗装が目を引く「エアポートリムジン」が知られている。都心の各所と成田空港間を結ぶ料金は3100円。これに対して、京成バスの「東京シャトル」(東京駅―成田空港間)の料金はたったの900円。平和交通とJRバス関東が共同運行する「THEアクセス成田」の料金も1000円と割安だ。どちらも、低価格を武器に利用者を増やしている。

 成田空港同様、関空でも空港アクセスとしてバスが台頭している。南海はリムジンバスを運営する南海バス、関西空港交通を傘下に抱える。鉄道が走っていない早朝や深夜の時間帯にバス便を投入し、じわじわとシェアを伸ばしている。鉄道ではJR西日本にリードを許すものの、鉄道とバスのトータルで見れば、関空アクセスの主役は南海だといえそうだ。

 かねてから、都心部とのアクセスの悪さが指摘されてきた成田、関西の両空港。JRと私鉄が火花を散らす中で利便性が向上するのであれば、利用者にとってはうれしい限りだ。




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