京都市下京区の真宗大谷派本山・東本願寺の北側にある宿泊施設「東浅井詰所(つめしょ)」が、5月末でいったん閉鎖された。木造2階の現在の建物を取り壊し、鉄骨4階に建て替える。詰所の機能を残しつつ、賃貸マンションを併設する。来年2月の再開を予定している。
■利用者減少で維持費捻出へ
滋賀県の旧東浅井郡にある同派寺院163カ寺の門信徒のための宿泊施設。門信徒を代表する24人の「家代(やだい)」と呼ばれる人たちが、輪番で詰所に泊まり込んで管理してきた。
現在の建物は1935(昭和10)年に建てられた。同郡の門信徒は素泊まりで1泊3千円だが、交通機関・基盤の発達で、日帰りが可能となり、宿泊者が減っていた。そこで、近年は門信徒以外の人にも500円増しで貸していた。だが、建物は築80年が経過し、耐震対策や屋根のふき替え、維持費の捻出などが必要になってきたという。
新しい施設は4階建て。1階を詰所とし、個室6室と大広間を設ける。1階の一部と2~4階を1DK、1LDKの賃貸マンションとする。代表理事の山口重臣さん(82)=長浜市谷口町=は「東浅井郡の門信徒みんなの施設。ご本山のお膝元で、ここをよりどころとしている人もあります。守っていくための変化です」と話す。
■ルーツは江戸時代の火災
詰所は、東本願寺周辺に全国の門信徒が地域ごとに建てた施設。同寺は江戸時代に4度焼失しており、そのたびに、全国から寺の再建のために駆け付けた門信徒が宿泊した施設が前身という。昼間の勤労奉仕を終えた門信徒が夜間に法話を聞いたことから、「お講屋」とも呼ばれた。1895(明治28)年に現在のお堂が完成して以降に建てられたものもある。
明治中期には46軒あったという調査記録が残る。「坂田郡」「西美濃」「三条」「伊勢三講」などの地名を冠するのが特徴だった。現在、「詰所」を名乗っているのは5軒のみ。
そのうち、東本願寺東南にある「伊香詰所」は、他に先駆けて一部をマンション化した。滋賀県の旧伊香郡に当たる高月町、木之本町、余呉町にある同派66カ寺の門信徒が管理する。
2006年、木造2階を鉄筋4階に建て替え、半分を単身者向けの賃貸マンションに変更した。詰所は全て個室とした。8人の「家代」は、有限会社化(現在は株式会社)に伴い「管理人」と名称変更したが、地元の門信徒8人が交代で泊まり込む方法は変えていない。社長の二宮護さん(78)=長浜市木之本町=によると、現在では日帰りできるため、お参りの人の宿泊は少なくなった一方、僧侶や観光客が泊まり、賃貸マンションは満室だという。