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航空機で「お医者様はいませんか?」に応じて治療・・・急病人が死亡したら責任は?

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お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんかーー航空機内で急病人が発生した場合、医師などの医療関係者に協力を求める「ドクターコール」。この求めに応じるかどうか、医師にたずねたアンケート調査の結果がネットで話題になっている。

この調査結果は、もともと、旭中央病院神経精神科の大塚祐司医師が2004年にアンケート形式で実施した医師の意識調査の結果を、別の医師がウェブ上で公開していたものだ。今月になって、インターネットのバイラルメディア「netgeek」が取り上げた。

その調査結果によると、ドクターコールに遭遇した場合、「申し出る」と回答した医師は、回答者67名中の28名(41.8%)、「その時にならないとわからない」と回答した医師は33名(49.2%)、「申し出ない」と回答した医師は5名(7.5%)、その他1名(1.5%)だった。つまり、「申し出る」と回答した医師が半数以下だったのだ。

調査結果について、「国内法では『死んだら私が全責任を負わされる』。免許剥奪すらありうる。そこまで他人に人生捧げてられません」といった、患者が死亡した場合の医師側のリスクを指摘する声がツイッターで多くあがっていた。

ドクターコールに応じて、医療行為をした結果、患者が死亡してしまったような場合、医師が賠償責任を負うことになるのだろうか。医療問題にくわしい池田伸之弁護士に聞いた。

●「航空機内」と「病院」では、求められる義務が異なる

「たとえば、道で行き倒れている人を医師が診療する行為は、民法上、『緊急事務管理』にあたります。

『事務管理』というのは、簡単に言えば、法律上の義務がない者が、他人のために一定のことをしてあげることをいいます。

仮に、診療をミスして障害を負わせたり、死亡させたりしても、悪意(わざと)もしくは重大な過失がない限り、損害賠償責任を負いません(698条)。診療契約を結んで治療行為を行った場合に比べて、責任が軽減されます」
航空機で「ドクターコール」に応じて診療した場合も、同様に考えてよいのだろうか。

「航空機や列車内等で、ドクターコールに応じた場合、患者の意識があるときは、患者との間で診療契約が成立すると考える余地があるでしょう。意識のないときも、輸送機関との間で契約が成立すると考えることができます。輸送機関が、乗客という第三者のために診療契約を結んでいるということです。


こうした場合の診療契約は、民法上は『準委任契約』として、善管注意義務(善良な管理者の注意義務)を医師は負うことになります(644条)。この場合、医師は道端の急病人を助けるような『事務管理』の場合よりも重い注意義務を負うことになり、軽過失でも賠償責任を負うことになります」

●アメリカやカナダで立法化された「良きサマリア人の法」
航空機内で完璧な治療を施すことは難しいのではないか。

「航空機内の限定された状況での注意義務は、施設の整った救急病院での診察における注意義務とは、全く様相が異なります。

医療機器や薬剤などが全くないか、もしくは不十分な状況で、しかも、患者は重篤な状態で、病歴や症状などの問診が十分にできないという状況です。そうした限定的な状況で最善を尽くすという義務が課せられているということです。

現実問題として、乗客が亡くなったとしても、民事上、刑事上の責任が問われる、あるいは、医師免許が取り消されるといった可能性はほとんどないのではないでしょうか」

では、今回の調査結果をどう考えればよいだろう。

「わずらわしいことに関わりたくないという医師の心理も十分にわかります。

アメリカやカナダでは、急病になった人を救うために、無償で善意の行動をとった場合、できる限りのことを誠実にしたのなら、たとえ失敗しても、その結果について責任を問わないという趣旨の『良きサマリア人(びと)の法』が立法化されています。聖書のエピソードがもとになっています。

『良きサマリア人の法』のように、医師によるボランティアの救命行為については、免責を正面から認める立法措置があれば、そのわずらわしさも少しは軽減され、救われる命も増えるのではないか、と思います」







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