岸田文雄外相は21日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相と東京都内の外務省飯倉公館で会談した。
韓国側は、日本が進める「明治日本の産業革命遺産」(計23施設)の世界文化遺産登録について協力する方針を初めて示した。安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の間で実現していない日韓首脳会談に向け努力することを確認した。
韓国の外相の来日は約4年ぶりで朴政権下では初めて。
世界文化遺産の登録をめぐっては、韓国側が「戦時中に朝鮮人労働者が強制徴用された施設が含まれている」と反対していた。ただ、韓国政府も、世界文化遺産の登録を目指している案件があり、岸田氏は会談後、記者団に対し、「ともに協力して、両案件が登録できるよう努力することで一致した」と述べた。
懸案の慰安婦問題に関しては、岸田氏は昭和40年の日韓基本条約で「完全かつ最終的に解決」したとの立場を主張。尹氏は日本に「法的責任」を求める姿勢を崩さず、双方が原則論を繰り返したもようだ。
韓国側は慰安婦問題で日本が譲歩しなければ日韓首脳会談に応じない構えをみせているが、双方は今秋にもソウルでの開催が想定される日中韓首脳会談の際に、日韓首脳会談を行う道筋を模索したとみられる。
両外相は、相互訪問の実施で合意した。韓国の尹外相は岸田外相に年内の訪韓を要請し、岸田氏は適切な時期の訪韓を調整するとした。
東京電力福島第1原発事故を理由に韓国が日本からの水産物輸入の規制を強化している問題でも意見交換。南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で中国が岩礁埋め立てを強行し、地域情勢が不安定化していることへの対処についても議論したとみられる。
一方、安倍首相は在日韓国大使館が22日に都内のホテルで開催する国交正常化50年の記念式典に出席する意向を固めた。また、韓国の聯合ニュースによると、韓国大統領府は21日、朴大統領がソウルで22日に行われる在韓日本大使館主催の記念レセプションに出席する予定であると発表した。