大腸がんが発症するメカニズムの一端を、京都大医学研究科の成宮周特任教授、青木友浩准教授らのグループが解明し、22日発表した。炎症に関係する分子を特定し、この分子の阻害剤で発がんを抑えられるという。
国内で毎年11万人が発症している大腸がんは、腸の炎症が発がんを促すことが分かっている。アスピリンなどの抗炎症薬の服用が発症予防になるが、消化管からの出血など副作用が問題となっている。
グループは、炎症物質プロスタグランジンE2と、それと結合する受容体EP2が、大腸がんの発症に大きく関与していることを突き止めた。マウスを使った実験で、EP2をなくしたり、EP2との結合をブロックする薬剤を投与したりすると、がんの発症が大幅に抑えられることを確認した。EP2は主に哺乳類の受精時に働くため、生まれた後では完全に阻害しても目立った副作用はないという。EP2の安全な阻害剤は現在開発中。成宮特任教授は「アスピリンはEP2以外にも働くので副作用がある。EP2だけの阻害剤を日常的に服用することで、安全に大腸がんの発症リスクを大幅に下げることが期待できる」と話している。