麻薬オキシコドンの錠剤の密輸容疑で逮捕されたトヨタ自動車常務役員のジュリー・ハンプ容疑者(55)。警視庁の健康診断の結果、鎮痛作用のあるオキシコドンが必要な状態ではないとみられることが、分かった。夫と2人の子供を持つ超エリート幹部職員のまさかの逮捕。米メディアも大々的に報じるとともに「日本はドラッグに関して規制が厳しい」などと伝え、事件の推移を注視している。
捜査関係者によると、18日の逮捕後、ハンプ容疑者が勾留可能かどうかを確認するため、医師に依頼して健康状態を調べたところ、特に問題は見つからなかったという。
ハンプ容疑者の経歴やトヨタのコメントなどを交えて、事件の内容を伝えた米メディア。多くのメディアは、違法薬物をめぐる米国と日本の規制の違いにも注目した。
今年はじめに多動性障害の治療薬を日本に持ち込み、2週間以上勾留された米国人女性のケースを紹介。米国で合法的に処方された薬だったが、覚醒剤の一種で、日本では使用禁止となっているアンフェタミンが含まれていたのだ。女性は、ケネディ駐日米大使らの仲裁で釈放された。
米全国紙USAトゥデイは「日本は、欧米諸国に比べて、薬物に関する法律が厳しい」とする専門家の見解を載せるなど、ショックは広がっている。
ハンプ容疑者は、広報・渉外部門で順調にキャリアを積み上げてきた。
ニューヨーク・クイーンズ地区の出身。25年間勤めた米ゼネラル・モーターズでは欧州地域のコミュニケーション部門副社長まで上り詰め、2007年に「ペプシコーラ」で知られる米ペプシコに移籍し上級副社長になるなどトントン拍子に出世。12年6月にトヨタ北米子会社に入社すると、わずか3年で本社の常務役員に就いた。
トヨタ社内では私生活を知られるような付き合いはなかったとされるが、ツイッターなどの投稿から、ハンプ容疑者の人柄をうかがい知ることができる。
プロフィル欄には、米女優のキャサリン・ヘプバーンの「ルールを全部守っていたら、楽しいことを全部逃してしまうわ」という名言を掲載。投稿の内容は仕事関係が中心だが、アメリカンフットボールの試合結果に興奮したり、サングラスと付けひげ姿でそろえた夫と娘との写真には「わたしたち家族のモットーはただ楽しむだけ!」と投稿。ドラッグ文化に心酔した米ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンさんの言葉をリツイートすることもあった。
フェイスブックには今月15日、東京に移り住んだ印象を「とても住みやすい都市。刺激的なうえ、平和や静寂さも感じるパラドックス」などとつづっていた。