中国各地で昨年年初からシャドーバンキング(影の銀行)の債務不履行が多発する中、中国国内メディアの報道によると、河南省で投資会社の元営業マンで被害者でもある数人がこのほど自殺し、被害総額はおよそ2億元(約40億円)に達する。
同省西平県にある会社「河南浩宸担保投資有限公司」は6年前に設立、3年前から地元で40数人の営業マンを雇い、県内の農民約4千世帯から総額2億元を募った。「営業マンが農民から預かったお金を会社に貸す」という仕組みであり、営業マンは農民に自分名義の金銭預かり証を渡す。給与は資金集め総額に応じた出来高制で、会社側が毎月農民に利息を払ってきた。
昨年12月末、営業マンは会社から「経営が困難で、元金を還付できない」という内容の通知を受け、今年1月の利息支払いを最後に経営陣は姿を消し、会社事務所である地元の民家は空き室となった。一方、農民は営業マンらに預り金の返済を強く迫っている。中には自殺や殺害予告を出した人も多くいるという。
こうした中、83世帯から総額255万元(約5100万円)を集めたという李さん(57)が4月下旬、井戸に飛び込んで自殺、5月はじめ、もう一人の63歳の同僚張さんが首つり自殺した。死後、遺族の元に「金を返せ」と農民たちが押し寄せているという。
報道によると、同社は「融資性担保機構の経営許可証」を受けた民営企業である。専門家の話ではこの種の経営許可では資金の募集を行ってはならず、同社に違法経営の疑いがもたれている。
このケースはシャドーバンキング問題に該当するともいわれている。銀行以外の機関が資金を集め、融資を行う中国シャドーバンキングの規模は最大27兆元(約540兆円、中国社会科学院発表)に及ぶ。その規制は緩くて不透明な部分が多く、大規模詐欺を誘発する無法地帯ともいわれ、国内外の経済専門家は「中国社会と経済の安定を脅かす大問題」と懸念している。昨年年初から、全国各地でシャドーバンキングの債務不履行が多発。政府の監督責任を追及し、捜査を求め、救済を要請する被害者の抗議行動が続いている。今後、被害者はさらに激増するとみられる。