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習近平の父を讃えるべく墓が観光地化 外国人立ち入り禁止

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 中国では毛沢東の神格化が文化大革命を招いたとの反省から、個人崇拝を禁じてきた。だが、現在の習近平国家主席は、昨今自らの下放先を聖地化し、父親への崇拝まで呼びかけているという。ノンフィクションライターの安田峰俊氏が、習近平の「聖地」を訪れた体験を語る。

 * * *
 お揃いの赤い野球帽を被った老人たちが、複数のバスからゾロゾロと降りてきた。小さな赤旗を振る添乗員に連れられて、広大な駐車場を横切り目的地へと歩いていく。

 彼らは、中国共産党の聖地を巡るツアー「紅色旅遊(ホンセーリュイヨウ)」の参加者たちだ。地方の高齢者層や、共産党員からの申し込みが多いという。現地出身のタクシー運転手が話す。

「最近、この場所を行き先に組み込むツアーが増えた。個人で訪れる客を、タクシーに乗せることもよくある。習主席のおかげで仕事が増えたよ」

 私がいる場所は、陝西(せんせい)省の古都・西安(シーアン)から車で40分。習近平の父の墓所「習仲勲(しゅうちゅうくん)陵園」だ。習仲勲の生まれ故郷・富平県に位置する墓は、生前の彼の姿を彫刻した高さ数mの墓石を中心に、周囲一帯が面積6万平方メートル(東京ドーム1.2個分)ほどの巨大な公園として整備されている。

 習仲勲は、かつて副総理を務めた党の重鎮だ。墓自体は彼の没年(2002年)に造営されたが、習政権の成立で来訪者がぐっと増えた。

 一方、この墓所は「観光地」にもかかわらず、警備が非常に厳重である。入り口では公安当局者が来訪者のIDカードを確認・登録し、その後に飛行機の搭乗さながらのセキュリティチェックがある。一人一人、全身を金属探知機でくまなく調べられ、液体物(ペットボトルの水など)はすべて没収だ。敷地内で会った若い男性観光客が話す。

「習主席はいま、腐敗官僚の摘発を厳しく進めています。この保安検査は、失脚した貪官(タングアン、汚職官僚)の関係者などの不良分子に、父親の墓を荒らされないためでしょう」

 石畳を歩き墓石を目指す。目の前に、お揃いの緑色の制服を着た小学生の一団が、献花のために横一列で並んでいた。西安市内にある、親政府系の教育団体が組織した研修遠足だという。

「一躬(イーゴン)、二躬(アルゴン)、三躬(サンゴン)!」

 引率係の女性が、中国国旗を片手に号令を飛ばす。声に合わせて、子どもたちは「習主席のお父様」の石像に向けて三度、深々と頭(こうべ)を垂れた。

 習仲勲陵園から道路を挟んだ向かいには「浙江省(せっこうしょう)愛国主義教育基地」と称する三階建ての建物がある。習仲勲を称える記念館で、同じく「紅色旅遊」の観光スポットだ。

 入り口で私がパスポートを差し出すと、水色の制服を着た公安の男性が血相を変えた。

「外国人が墓に入ったのか!」

 そのまま警官の詰め所に連行されてしまう。室内には公安の彼のほか、アサルトライフルを持った黒い制服の男が3人いた。どうやら中国当局は、ただの記念館の警備に対テロ鎮圧部隊の特警(中国版SAT)を配備しているようだ。

 もっとも、特警たちに緊張感はなく、私を見てもお茶を飲んでいるだけ。ただ、例の公安の男は強張った表情だ。

「おい、現在のIDチェックの担当官は誰だ? 貴様ら、中国人以外の人間を立ち入らせるとはどういうことだ?」

 やがて私のパスポートを取り上げ、尋問が始まった。

「西安観光のついでに、足を延ばしただけなんです」

 適当に言い繕っていると、数分後に釈放された。ただし、参観は許可しないという。

「とにかく、外国人は立ち入り禁止だ。そういう規則だ」

 一応は「観光地」なのに、部外者に見られて困るものでもあるのだろうか? だが、公安の男は私の質問に「規則」の一言を繰り返すだけだった。








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