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一流企業「わが社の中国人社員」ちょっとヘン! 空気を読まない、忠誠心が薄くてカネと出世が大好き……

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「日本での仕事は楽ですよ。自分の意見を主張し続ければ、みんな簡単に折れてくれるんですから」。本誌の取材に答えたある中国人社員は、こう言って笑った。彼らに頭を抱える日本人社員たちの嘆き。

■仕事はできるんだけど……

三菱東京UFJフィナンシャルグループの中堅社員が言う。

「部下の中国人社員に『手が空いたら、この資料のコピー取っておい て』と頼んだときのことです。その社員は『はい、わかりました』と、そのときは素直に返事をしました。しかし、いつまでたっても持ってこない。

そこで『コ ピーまだ?急いでいるんだけど』と言うと、また『わかっています』と。しかし1時間たっても、一向にコピーを取らない。いよいよしびれを切らして『早くしてくれ』と催促すると、『手が空いたらって言ったじゃないですか。ワタシいま忙しいので無理です』と返されました。

日本人同士なら、『手が空いたら』という言葉はあくまで建て前で、上 司から頼まれれば優先的にやるのが当たり前でしょう。しかし彼らには、その微妙な間合いはわからないし、わかろうともしない。『5分以内にやって』など、 具体的に指示をしないと思うように動いてくれないんです」

厚生労働省の最新の調査によると、現在、日本で働く中国人労働者の数は約30万人。最近では単純労働ではなく、一流企業で働くエリート中国人も増えている。

だが、彼らと一緒に働く日本人には共通の悩みがある。

「仕事はできるけど、ちょっとヘン……」

やはり文化と価値観の違いが大きすぎるのだ。今回は、そうした一流企業での実例を紹介していこう。

■ワタシは悪くない

富士通のベテラン社員が嘆く。

「中国人の部下に『取引先の作りたがっているアプリケーションがどんなものか聞いて、相談に乗ってあげて』と頼んだとき。『ワタシは技術職です。それは営業の仕事でしょう? ワタシが出向く理由を明確に説明してください』と注文されました。

何とか説得しましたが、そんな調子だから、出来上がった製品は取引先の要望とは齟齬があった。どうやら先方は、長年の付き合いがあるから あれこれ注文をつけずともわかると思っていたらしい。しかし彼にしてみれば説明不足。『ワタシは言われたことをきっちりやりました。何も悪くない』と言っていました」

大手証券会社で働く張洋さん(30代、仮名・以下同)もまた「空気を読む」ことを一切せず、上司を驚かせた。

張さんと上司はある日、取引先との商談に。たまたま昼時で、先方が弁当を用意してくれていた。当然、コンビニのものではなく、弁当屋の幕の内弁当だった。

「しかし食をきわめて重視する中国では、『冷たいものは食べない』という文化があるらしく、張はまったく手を付けない。それどころか会議室から出て、外に食事を取りに行ってしまいました。取引先も怒るというよりは、苦笑いをしていました」(張さんの上司)

彼らの行動の背景を、中国文化に詳しいノンフィクション作家の河添恵子氏が解説する。

「日本では思いやりや譲り合いが美徳とされていますが、中国は『自己主張すること』が評価される文化です。相手の気持ちを察するのではなく、お互いの考えを徹底的にぶつけ合いながら、価値観を確かめ合うのが中国人なのです」

■とにかく声がでかい

大事なのは会社よりも自分自身。だからこそ中国人が何よりも重んじるのは、メンツだ。中国人社員との付き合いでも、それをわかっていないと、取り返しのつかないことになる。

パナソニックグループに勤務する李秀英さん(20代)の上司が嘆く。

「文化の違いは十分に考慮しているつもりでしたが、ついやってしまった。他の社員がいる前で、李くんを叱責してしまったんです」

どんな重大なミスをしようと、どんなに相手が目上の上司だろうと、メンツを傷つけられれば、中国人は決して許さない。李さんは烈火のごとく怒った。

「興奮したためか中国語で反論していました。ところどころ挟まる私の名前以外は、何を言っているのかまったくわからなかったけど、とにかくその声が大きいのなんの。部署中に響きわたって、皆が一斉にこっちを見てましたよ。

それだけではありません。李くんは私のさらに上の上司に、『不当な理 由で傷つけられた』と直訴したんです。結局、上司はその勢いに押され、『もうちょっと李くんと上手く付き合ってくれ』と私が注意を受けることになりまし た。その上司がダメなら、さらに上の役員にでも直談判したでしょうね」

声が大きいのは中国人の特徴だが、もう一つ、日本人と大きく異なるのが、「ウソを悪とは思わない」価値観だ。

「私、満点でした」

そう言って周囲に衝撃を与えたのは、広告代理店に今年入社したばかりの陳玉麗さん(20代)。同期社員が語る。

「うちの会社では、新入社員は配属前の研修で会社の業務内容に関する テストを受けます。取引先はどこかとか、各部門の売り上げはいくらかといったものですね。職場に出る前の予備知識として、一応押さえておけ、という程度の位置づけです。ですから点数と人事考課は関係なく、みんな気楽に受けていました。しかし、陳さんだけは違った」

このテストは、終了後に人事部の先輩社員が答えを告げ、各自が丸つけをする形式だった。その答え合わせの時、この同期社員は陳さんのある行動を目撃し、言葉を失ったという。

「陳さんは何問か間違っていた。しかし自分の答えを素早く消しゴムで消し、書き換えて丸をつけていたんです。そして、『満点だった人いますか?』という人事部の問いかけに、スッと手を挙げた。いかにも誇らし気な顔で。僕と同じように、近くに座っていた同期も一部始終を目撃していたようで、思わず二人で顔を見合わせました」

彼らは驚いているが、これは中国人にとっては当たり前の行動だ。前出の河添氏が言う。

「自分の利益が最優先の中国人にとって、ズルなど平気のへっちゃらで、『恥』という文化もないに等しいんです。善悪よりも、やったもん勝ち。声も態度も大きいほうが勝ち。これが中国社会の習慣です」

■カネと出世が大好き

そんな文化の中で育ってきたからこそ、当然、会社というものへの忠誠心は薄い。業務の一環として知り得た情報であっても、「個人が集めたものは個人のもの」という意識がある。その情報を中国へ「持ち帰る」ことにも、何のためらいもない。

三井物産に勤める劉敏さん(30代)がそうだ。

堪能な語学を活かして、海外との取引で活躍していた劉さん。しかし30歳を越えた頃から、様子がおかしくなってきたという。

「『この仕事は中国のためにならない』とよく口にするようになりまし た。以前は真面目だったのに、会議中に突然、それまでの話を混ぜっ返すことも増えてきた。それだけに、十分なデータを収集し終え、そろそろ中国へ帰る準備 を整えているのでは、と社内では『スパイ疑惑』が噂されています」(劉さんの上司)

中国人が重んじるのは、「人の和」よりも「個性」。大手人材派遣会社のリクルートで働く宋志令さん(20代)の「自分好き」ぶりには、同期の女性社員も呆れている。

「彼女はエンジニア職なんですが、自分でゲームを作るほどプログラミングの能力は高い。中国のSNSサイトでは有名人みたいで、『私のファンは1万人近くいるんです』と、初めて会う人全員に言っています。

正直、その際限のない自己顕示欲は、一緒にいて疲れます。先日も、たまたま同じタイミングでトイレに行ったら、『ホント、あなたも私のこと好きだよね』と真顔で言われて、返答に困りました」

彼らが自分を特別だと確認できる手段は他にもある。それは会社での成績と評価。つまり、カネと出世だ。

日本生命に勤務する周偉さん(20代)もまた、そんな社員の一人。同僚が言う。

「『自己責任』、『節約』という意識が強い中国では、保険業の地位が低いらしいんですが、周くんは『日本で保険を学び、中国の状況を変えたい。私にはそれができる』といつも意気込んでいます。実際、仕事には非常に熱心で、 営業成績は部署でも常にトップ3に入るほどです。しかし熱心すぎるからこそ、社内で反感を買うこともよくある。

たとえば、社員同士の飲み会には滅多に来ません。『その飲み会は何のメリットがあるんですか』と、たとえ先輩に誘われても断る。最近は断り方も雑で、『家でコメを炊いてしまったので』とか『自転車の修理に行くから』とか、関係ないだろとツッコミたくなるものばかりです」

■ズケズケ質問する

しかし一方で、直属の上司への態度は他の社員に対するものとまったく違うという。

「上司が声をかければ、飲み会にも来ますね。上司が帰ったら即、周くんも帰りますが。それにあるとき、年賀状やお中元の文化を教えたら、すごく喜んでました。以来、上司にはこまめに贈っているみたいです」

評価されることが大好きな中国人にとっては、転職も当たり前。より良い条件を提示してくれる会社が見つかれば、迷わず転職する。

前出の富士通ベテラン社員が言う。

「うちである程度実績を積んだ後、突然辞める中国人社員もよくいます。連絡をすると、『次の会社が決まったのでもう行かない』と。それどころか、転職先の雇用契約書を見せてきて『転職先よりも良い条件を提示できるなら戻ります』と言われたこともありました」

東京海上日動の元社員は、中国人社員から言われた一言が忘れられない。

「かわいそうですね」

定年する年に入ってきた女性社員から、開口一番そう言われたのだ。

「後で中国法人の後輩に聞いたら、それは『ずっと転職ができなかったかわいそうなオジさん』という意味だと教えられました。中国では3年で転職するのが目安で、自分の適性に合わないと1ヵ月で辞めることもざらにあるようです」

さらにこの元社員は、定年前に開かれた懇親会でこんな質問攻めにもあった。

「『年収はどのように上がっていったんですか』、『どちらの大学出身 ですか』、『結婚は何歳でしましたか』と、立て続けに聞かれました。極めてプライベートな質問をぶつけるのも、彼ら独自のコミュニケーションで、彼女としても悪気があったわけじゃないようです。ただ、驚きましたし、いい気持ちがしなかったのは事実です。私が現役の頃にはいなかった中国人社員は年々増えてい る。正直、後輩たちは苦労するだろうなと、心配しています」

中国人に、「郷に入っては郷に従え」という発想はない。彼らと上手く付き合っていくには、「日本人と同じものを求めてはいけない」と、心に叩き込んでおく必要がある。

「週刊現代」2015年7月4日号より




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