奈良県香芝市立小6年の女児(11)が連れ去られ無事保護された事件で、監禁容疑で現行犯逮捕された無職、伊藤優容疑者(26)は短期間に転職を繰り返していた。
以前勤めていた介護施設では、上司に「一生懸命やっているのにうまくいかない」とこぼし、次第に無断欠勤や遅刻を繰り返すようになったという。伊藤容疑者の屈折した感情が面識のない女児を連れ去るという卑劣な犯行につながったのか。伊藤容疑者を知る人は「なぜこんなことを」とうつむいた。
伊藤容疑者の自宅がある同県橿原市南八木町の住宅街。自宅アパートには一人人で暮らしていた。近所の住民らによると、伊藤容疑者は平成25年7月に同県大和高田市から転居してきた。だが近所づきあいはほとんどなく、近くに住む30代の女性は「おとなしく静かに暮らしていた印象。女の子を連れ去るイメージとは結びつかない」と話す。
一方、25年まで伊藤容疑者が住んでいた大和高田市のアパートに住むパート女性(44)は「体調を崩した母親を車でどこかに送り迎えをする好青年だった。捕まったなんて信じられない」と話す。
伊藤容疑者は約3年前まで橿原市のデイサービスセンターで介護職員として働いていた。センターの責任者の女性(60)は「注意されても『頑張ります』と言って仕事に一生懸命取り組んでいた」と振り返る。だが、「利用者がトイレに行く時間を忘れるなどミスを繰り返していた」とも語る。伊藤容疑者はなかなか仕事が覚えられず、注意されることもたびたびあった。次第に無断欠勤や遅刻を繰り返すようになり、わずか3カ月で退社した。
「一生懸命やっているのに、仕事や人付き合いがうまくできず、周囲に受け入れてもらえない」。責任者の女性は、伊藤容疑者からこう聞かされたという。
伊藤容疑者は郵便局で車を洗う仕事もしていたというが、ここでも、あまり長く続かなかったという。
「こんなことをする人ではなかったのに…」。女性はそう言ってうつむいた。
伊藤容疑者に連れ去られ、5日夜に無事保護された女児が通う小学校では6日朝、多くの保護者に付き添われながら、児童らが不安そうな表情で登校した。小学校の校長は、全校朝礼で「見つかって良かった」と話した。