夏の風物詩といえば、日本ではセミの鳴き声だろう。セミは幼虫として土の中で5年以上を過ごし、羽化してからわずか数週間でその短い命を終える。子どもの頃、そんなセミのはかなさに夏休みが終わる寂しさを重ねた人も多いだろう。しかし、中国から、はかなさもクソもないニュースが飛び込んできた。
安徽省六安市の農村部では、村人が夜中、数千本もの白楊樹にガムテープを巻き始めた。数時間後、ガムテープには羽化しようと気を登ってきたセミの幼虫が大量に付着していた。なんとも残酷な行為だが、実はセミの幼虫は中国では大人気の食べ物。
カラッと揚げたセミの幼虫は、スナックのように露店で売られることになるのだ。
夏になると、中国各地では屋台や露店で食事する姿が見受けられるが、セミの幼虫もおいしいと大人気。「騰訊新聞」(7月7日付)によると、村人は一晩でおおよそ2.5kgから4kgもの幼虫を捕まえることができるという。バケツいっぱいに詰まった数百匹のセミの幼虫を見ると、なんだか悲しくなってくる……。
村人はこれを屋台に直接売りにいくわけだが、キロ当たり70元(約1,400円)で買い取ってくれるという。村人は、一晩に平均して200~300元(約4,000~6,000円)の収入になるという。中には、ひと夏で数十万円稼ぐツワモノもいるという。地中から湧いて出てくる幼虫を勝手に取って売るだけだから、元手はほぼゼロだ。
「中国では、昆虫食がさほど珍しくない。屋台に行けば、セミの幼虫のほか、サソリや蚕、タガメ、トカゲやバッタなんかが、揚げたり、焼いたりした状態で売られています。日本人にはゲテモノとしか映りませんが、タンパク質が豊富で食感もよく、夏にスタミナをつけるという意味で、現地の人は好んで食べていますよ。ただし近年では、殺虫剤や防腐剤など有害物質が多く含まれていたり、別の昆虫で偽装したりすることもあるようで、私は絶対、食べませんけどね」(中国在住の日本人)
近年、セミの幼虫の価格は上昇し、各地でこうした残酷な乱獲が行われているという。夏の風物詩を食べつくす行為に違和感を覚えずにいられないが、そのうちセミが中国からいなくなる日が来るかもしれない。