中国・済南(CNN) 世の中にはその土地になれていないと口に入れるのをためらうような食べ物がある。
記者が経験してきたなかでは、ボツワナのホテルで食べた黒いイモムシや、ウガンダの干したバッタ、北京で食べたニワトリの頭と足のスープもそうだった。
今回取材した中国の山東省済南で養殖されている生き物も、その1つと言っていいだろう。
養殖場を経営する王福明さんの夢は、たんぱく質豊かなこの食材を中国全土に普及させること。その食材とはゴキブリだ。
「このゴキブリたちを愛している。とてもかわいい」と王さんは言う。
済南の郊外、荒れ果てた工業地区に王さんの養殖場はある。ここでは1000万匹のゴキブリが「収穫期」が来るのを待っていると王さんは言う。
養殖場は倉庫のような建物で、狭い廊下を挟んで、屋根用のスレート板を積み重ねた「巣」が作られている。中に入るとアンモニア臭が鼻をつき、ゴキブリがカサカサと走る音が聞こえてくる。
王さんが育てているのはアフリカ原産のワモンゴキブリで、国内の医薬品会社にトン単位で納入している。
ゴキブリはすり潰されて錠剤にされ、胃や心臓、肝臓のあらゆる不調に効くとして販売されている。中国の漢方薬店では必ず見かける人気商品だ。
だが王さんは薬にするよりそのまま食べるほうがいいと言う。そして事務所にガスコンロを運び込み、ゴキブリをピーナツ油で素揚げにして振る舞ってくれた。
「ゴキブリを食べるようになってから、体調がずっとよくなった」と王さんは言い、もりもり食べ始めた。「今食べないと一生後悔するよ」
ゴキブリの素揚げは、揚げすぎたフライドポテトのようにカリカリしていた。そして持久力がつきそうな後味が残った。