東京都調布市の住宅街に小型機が墜落した事故で、死亡した川村泰史機長(36)が事故の4日前に行った「慣熟飛行」が、子供らを同乗させて東京ディズニーランド(TDL、千葉県浦安市)上空を旋回する、実態は「遊覧飛行」だった疑いが強まってきた。こうしたなか、事故の賠償総額が、ざっと計算しただけで20億円規模になる可能性が出てきた。
関係者によると、川村機長は7月22日午後、事故を起こした機体に成人男性と小学生ぐらいの子供らを乗せて、4~5人で離陸。TDL上空を旋回し、約40分後に調布空港に着陸したという。警視庁や国交省では、遊覧飛行が常態化していたとみて調べている。
事故の責任とともに注目されるのが、亡くなった搭乗者と巻き添えとなった民家の女性の遺族、自宅を全焼・損壊させられた被害者への賠償だ。
運輸事故調査に詳しい太平洋法律事務所の国府泰道弁護士は「整備に不備があれば(事故機を整備・管理していた)日本エアロテック(調布市)が責任を負う。操縦ミスであれば、責任は川村機長にあり、賠償義務を負うのは機長の財産を相続する遺族ということになる」と指摘する。
川村機長はエアロテックに入社後、パイロット養成会社シップ・アビエーションを立ち上げて独立。事務所はエアロテックと同じ建物内にある。
このため、国府氏は「仕事を委託している場合でも、支配と管理の関係にあるときは、支配する側の責任が発生する。今回、川村機長に対し、エアロテックがどのような話をしていたかで、どちらに責任があるのか違ってくる」と語る。
被害者には、どのような賠償がなされるのか。
「遺族への慰謝料は1人あたり2500万円前後と思われる。この慰謝料に加えて、亡くならなければ得られたはずの利益(逸失利益)が発生し、67歳まで働いたとして算出された額が遺族に支払われる」(国府氏)
仮に、川村機長に責任がなく被害者3人で試算すると、慰謝料だけで計7500万円前後。3人の年収の平均額を600万円とすると、支払うべき逸失利益は17億1000万円に達する。
今回の事故では、住宅の被害も大きかった。小型機は2軒の屋根を傷つけ、別の民家に突っ込んで炎上した。
工務店関係者は「一般住宅の解体・撤去費用は200万円程度だが、火災の場合、臭い除去など特殊作業が必要で、500万円程度になる。住宅の再建築費用は最低でも2000万円。さらに屋根が損傷した住宅だが、外壁などがゆがんでいる恐れがあり、1軒あたり最大で500万円は必要と思われる」と語る。
3軒だけでも賠償額は3500万円。ただ、住宅10棟などが被害に遭っており、総額は数億円に及ぶ可能性がある。
もろもろの賠償総額は20億円規模に膨れあがる。被害者の心痛は計り知れず、賠償も補償も迅速な対応が求められる。