ほかの作品のデザインによく似ているとインターネット上などで指摘されていた東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムの制作者でアートディレクターの佐野研二郎さんが手がけた大手ビールメーカーのデザインについて、佐野さんの事務所は、共同で制作していたデザイナーが第三者のデザインをそのまま使っていたことを明らかにしました。これについて佐野さんは、ホームページ上で「決してあってはならないことで責任を痛感している」と陳謝しています。
この問題は、大手ビールメーカー「サントリービール」がノンアルコールビールのキャンペーンで購入者にプレゼントしていた佐野さんがデザインした一部のバッグがほかの作品のデザインなどによく似ているとインターネット上などで指摘されたものです。メーカーは佐野さんからの申し出を受け、13日から30種類のうち8種類のデザインについて取り扱いを中止しています。
これについて佐野さんは14日夜、事務所のホームページを通じて、共同で制作していたデザイナーが第三者のデザインをそのまま使っていたことや、佐野さんはこれについて報告を受けておらず今回初めて知ったなどとする調査結果を明らかにしました。
そのうえで、「法的問題以前に第三者のものと思われるデザインをそのまま使用すること自体が決してあってはならない。私自身のプロとしての甘さ、そしてスタッフ教育が不十分で責任を痛感し厳しく受け止めております」などと陳謝するコメントを掲載しています。
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インターネットで酷似と指摘も
今回、問題となったデザインについてインターネット上では、今月に入ってから佐野さんのデザインと、ほかのデザインなどを並べて比較しながら似ているとの指摘が複数出されていました。
女性が泳ぐ姿とその影が描かれたデザインについては、外国人デザイナーのTシャツのデザインと似ていると指摘されていました。
赤っぽい色の矢印に「BEACH」と描かれたデザインについては、インターネット上のサイトに出品されている壁掛けのアートのデザインと似ていると指摘されていました。
フランスパンの一部が描かれたデザインについては、おすすめのパンを紹介する個人のブログに掲載されていた写真と大きさや形が一致していると指摘されていました。
佐野氏 ホームページ上で経緯など説明
第三者のデザインをそのまま使った経緯などについて佐野さんは事務所のホームページを通じて説明しています。キャンペーン用のバッグのデザインの企画や制作過程について「私、佐野研二郎の管理のもと制作業務をサポートする複数のデザイナーと共同で制作いたしました。夏を連想させる複数のコンセプトを打ちたて私の指示に基づいて約60個のデザインをレイアウトする作業を行ってもらいました」として佐野さんと複数のデザイナーの共同作業であったことを明らかにしています。
そのうえで、他の作品のデザインなどとよく似ているとの指摘を受け、事実関係を調査した結果「デザインの一部に関して第三者のデザインをトレースしていたことが判明した」と説明し当時は、スタッフから報告がなく今回の調査で初めて知ったとしています。
また、今回の行為については「弁護士に法的見解を確認しているところですが、法的問題以前に第三者のものと思われるデザインをトレースしそのまま使用するということ自体がデザイナーとして決してあってはならないことです。また、許諾の得られた第三者のデザインであったとしてもトレースして使用することは私のデザイナーとしてのポリシーに反するものだ」としています。
さらに、佐野さん自身の責任ついては「今回の事態は社内での連絡体制がうまく機能しておらず私自身のプロとしての甘さ、そしてスタッフ教育が不十分だったことに起因するものと認識し、このような結果を招いてしまったことを厳しく受け止めております」などと掲載しています。
一方、東京オリンピック・パラリンピックのエンブレムについては「模倣は一切ないと断言していたことに関しましては、先日の会見のとおり何も変わりはございません。事務所で応募したものではなく私が個人で応募したもので今回の案件とは制作過程を含めて全く異なるものであり共同で制作してくれたスタッフもおりません」と盗用などは一切ないと改めて否定しています。
「五輪組織委とは無関係」
佐野さんが新たなコメントを出したことを受けて東京大会の組織委員会は14日夜、「サントリービール」のデザインを巡る問題について「組織委員会とは無関係」とコメントしました。
そのうえで、佐野氏がデザインした東京大会のエンブレムについては「選考は公正かつ公平に行われ、採用されたエンブレムそのものについては独自のデザインを時間をかけて追求したオリジナルデザインであることは先日の記者会見で説明したとおりだ。佐野氏の声明でも、エンブレムは佐野氏個人で応募したもので、模倣が一切無いことが改めて示されている。組織委員会として、問題は全くないとする立場に変わりない」とコメントしています。