安全保障関連法案が9月17日、参院特別委員会で自民、公明など賛成多数で可決された。賛否両論の尽きなかった安保法案だが、いつになく反対デモなどが日本各地で起こった印象がある。中でもこの期間に名を上げた集団といえば、学生団体「SEALDs」だろう。
SEALDsの活動は、海を越えて、お隣・韓国でも少なくない話題を集めている。先日、安全保障関連法案に関する中央公聴会で「公述人」として意見表明した、同団体の中心メンバー奥田愛基氏の演説を全文公開する韓国メディアもあったほどだ。
いくつかの韓国メディアの“SEALDs評”を見てみよう。
「東亜日報」(9月16日)は「沈黙を破った日本の若者たち、反安倍の中心に」という記事を掲載した。その中で、1960年代の日本の学生デモと現在のデモは違うとしながら、「変化の中心には“SEALDs”という組織がある」と分析。「安保法案に反対する目的で5月に結成された学生団体SEALDsは、SNSで意思疎通し、ラップでスローガンを叫ぶ」と紹介している。
テレビ局のSBSは、「ワールドリポート」(9月11日)というコーナーでSEALDsを取り上げた。「SEALDsは最近、日本で最も注目を集めている青年たちだ。集団的自衛権に関連した安保法案に反対するデモの現場でスポットライトを浴び、今では反戦デモの象徴になった」という紹介に始まり、SEALDsの特徴を3つに分類して解説。「集会運営方式が洗練されている」「SNSを活用した広報活動が卓越している」「メッセージが簡潔でわかりやすく、若い者になじむ」などと報じた。そして最後は、「はたして日本の民主主義が“国会内の多数決”にあるのか、それとも“国会外の民心”にあるのか。SEALDsと若者たちの言動を中心に見守るのもひとつの観点になりそうだ」と締めくくっている。まさにSEALDsこそ、日本の若者代表という扱いだ。
「ハンギョレ21」は、9月上旬にSEALDsメンバーである福田和香子氏のインタビューを掲載。「8月30日、多くの人が集まったのも、SEALDsの役割が大きい。スローガンを叫ぶ学生の中でも、福田和香子(和光大学4年生)のクールな姿は、韓国にも知られている」などと紹介した。また「経済トゥデイ」は、「(SEALDsは)政治的には緩やかに組織されたが、平和運動には積極的だ」と好意的な見方を示している。
今さら強調する必要もないが、韓国では安倍政権に対する非難の声が圧倒的だ。当然、安保法案に対しても非常に批判的なため、日本の若者たちが反安保法案のために行動しているという事実は、さぞ痛快だったに違いない。
今のところ韓国メディアは、一部ネット上で指摘されている「デモ参加者数の捏造」や「中心メンバーはキリスト教愛真高校出身者たち」などといったマイナス面には、まったくといっていいほど触れていない。現在までSEALDsを好意的に報道してきただけに、手のひらを返すわけにもいかないだろう。
いずれにせよ、今回の騒動で一躍有名になったSEALDs。彼らが今後どのような活動を展開していくのか、韓国もその行く末を案じているに違いない。