国内最大の指定暴力団山口組(総本部・神戸市灘区)が、8月末の分裂後、篠田建市(通称・司忍)6代目組長のボディーガード役を2倍に増強していたことが捜査関係者への取材で分かった。篠田6代目組長は秋の彼岸に恒例としていた歴代組長の墓参にも姿を見せていなかったことが判明しており、警察当局は離脱派が結成した神戸山口組の襲撃を恐れ、外出を控えるとともに警護役も増やしているとみて動向把握を進めている。
捜査関係者によると、篠田6代目組長が分裂後、ボディーガード役を2倍に増やしていたことは、愛知県警が1日、職業を偽ってクレジットカードの発行を受けたとして詐欺容疑で逮捕した弘道会系組幹部(45)の捜査過程で判明した。
この組幹部は篠田6代目組長のボディーガード役を務めている1人で、名古屋市中村区の弘道会本部のほか、神戸市灘区の山口組総本部にも出入りしていた。行動確認の結果、8月末の分裂以降、篠田6代目組長の警護が2倍に増強されていたことが分かったという。組幹部は調べに対し、黙秘している。
篠田6代目組長をめぐっては8月末の分裂以降、毎年9月23日の秋の彼岸に行っている山口組歴代組長の墓参に今年は訪れなかったほか、外出を控えていることが警察当局の捜査で判明している。
今年の墓参には山口組若頭補佐で弘道会の竹内照明会長ら直系組長が訪れていた。捜査関係者によると、警備は例年に比べて厳重で、とくに竹内若頭補佐が乗っていた車は防弾ガラス仕様になっており、周囲に3、4台の車が取り囲むように警護していたという。
捜査関係者によると、離脱派が結成した神戸山口組は、山口組の弘道会会支配が強まっている篠田6代目組長体制で組長の威光を受けてスピード出世した竹内若頭補佐に不満や反感を募らせているとされ、対立抗争に発展した場合、篠田6代目組長とともにターゲットなる恐れが高いという。
山口組では4代目組長の襲名をめぐり1984年、組が分裂。翌年、離脱派が結成した一和会の組員に4代目組長と若頭、ボディーガード役の直系組長の3人が射殺され、「山一抗争」に発展した。
警護が手薄だったのが原因だったとされ、山口組は過去のケースを考え、篠田6代目組長の警護役を2倍に増強するとともに竹内若頭補佐のガードも強めているとみられる。