中国では、かつてトレンドだったデジタル一眼の旬が過ぎ、iPhoneで写真を撮る観光客が目立つようになりました。写真好きと言われる中国人が、デジタル一眼を使わなくなったのはなぜでしょうか。
●観光地で中国人が写真撮影に使うのはiPhone
10月1日からの国慶節では、中国全土から中国国内外へ、多くの中国人が旅行に出掛けた。東京では、銀座や浅草をはじめとして、さまざまな場所で中国人観光客を見かけたことだろう。
この時期に筆者が訪ねた四川省・成都の観光地でも同様だ。成都は内陸部最大の都市で、「三国志」の蜀の名将がまつられている「武候祠」や、漢詩でおなじみの「杜甫草堂」があり、さらに成都周辺には青い水で知られる「九寨溝」や「黄龍」「楽山大仏」など、世界遺産クラスの観光地が数多くある。
数年前まで、成都を訪れる観光客は、ほとんどがデジタル一眼をぶら下げていた。ところが最近は、そんな観光客はほとんど見かけない。理由はもちろん、スマートフォンに取って代わられたからだ。
近年の中国メディアにおけるデジタル一眼評を見ると「スマートフォンよりきれいに撮れる」と相変わらず評価は高い。ネット上の個人の書き込みを見ても「画質はデジタル一眼のほうが上」という評価ばかりだ。にもかかわらず、成都でも銀座でも、iPhoneのゴールドモデルで写真を撮っている中国人観光客が少なくない。中国人観光客がiPhoneを使いたがるのはなぜなのだろうか。
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●デジタル一眼は消えてしまうのか……
「デジイチユーザーが消えたのはなぜか」という問いに対し、最も多かった中国人の回答は「デジタル一眼は成功者の証しだから」というもの。今やiPhoneにその座を奪われたデジタル一眼は、“メンツ”のためのアイテムだったというわけだ。確かにスマートフォンにおいても、実用性を重視するユーザーは小米(シャオミ)などのAndroid端末を買うが、メンツを重んじるユーザーはiPhoneを選ぶ傾向がある。
もちろん「スマートフォンのカメラ性能が向上した」という理由も挙げられるだろう。中国では、この3年ほどで情報端末の主役が3G/4G対応のスマートフォンになり、それまでパソコンで行っていた作業をスマートフォンで済ませてしまうのも当たり前になっている。デジカメで撮影した写真をパソコンで見たり、印刷したりしていた人たちが、スマートフォンで撮ってそのままSNSにアップするようになっているのだ。
とはいえ、デジタル一眼のニーズがなくなったわけではない。「天猫」や「京東」「淘宝網」といったオンラインショップでは、機種によって数十台から100台以上も売れているし、量販店のカメラフロアを見ても、デジタル一眼を購入する人たちはいる。デジタル一眼の“メンツ効果”は薄れてしまったが、一定のファン層は新機種を買い支えていくのだろう。