「35歳以下の独身、連れ子不可。自身の趣味や人生の目的についての作文を要提出。要面接」―この募集広告、求人広告でもなければお見合い相手募集の広告でもない。中国では最近、独身の若者の間でシェアハウスが脚光を浴び始めており、冒頭の文章はその入居者を募る広告からの抜粋だ。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが伝えた。
中国では長らく、持ち家を持つことが当たり前の目標とされてきた。現在でも結婚の最低条件として持ち家を挙げる人は多い。しかし、現在の若年層(特に1985年以降の生まれ)はその親世代ほど住まいにはこだわりがないようだ。そもそも、身を粉にして生涯働いても、持ち家を手に入れることがますます困難な時代になった。
独身者は結婚するまで実家で両親と同居、というのが中国では普通だが、都市部に出てきた地方出身者などは、一つのアパートに複数人で入居して共同生活を過ごすというケースも多い。中国ではそもそも単身者用の賃貸物件が少ないうえ、若年層の独居は経済面でも現実的ではない。しかし、1軒の安アパートにたくさんの同居人がいる生活は窮屈で、プライバシーも何もあったものではない。そこで注目を浴び始めたのがシェアハウスだ。
プライバシーの保たれた個室に入居し、リビングなどの共有スペースでは気軽にシェアメートとの交流も図れるので、無味乾燥な一人暮らしよりも楽しい。契約期間は最短3カ月と短く、気に入らなければすぐに退去できるのも魅力だ。広東省広州市で最近になってシェアハウスに入居したある若者は、「まるで学生寮みたいで飽きることがない。安アパート住まいに比べて家賃が安いとはいえないけれど、交際費を削れば大丈夫な範囲」と感想を話した。彼の入居するシェアハウスは家賃2500元(約4万7000円)。18平米以上の居室が147室あり、300平米にも及ぶ共同スペースにはジムやビリヤード場なども備える。
こうした独身者向けの居住物件は中国の賃貸住宅市場で現在、最もポテンシャルを秘めているものとして熱い視線が注がれている。その市場は年間8000億元(約15兆円)にもなり、今後も年間600億元(約1兆1200億円)増で成長していくとみられている。国内大手不動産デベロッパーも、都市部若年層向けの低価格な賃貸物件を今後のメーンプロジェクトに据え始めている。