美人女医タレントの関与も疑われる診療報酬詐欺事件が本格的に動きだした。警視庁組織犯罪対策４課は６日、指定暴力団住吉会系組長や接骨院などを運営する会社役員の男ら計１４人を詐欺容疑で逮捕した。診療報酬などの不正受給の総額は１億円以上とみられ、詐欺スキームの末端には５００人超のニセ患者が存在。暴力団組員やお笑い芸人がいたが、中でも芸人仲間への紹介役だったピン芸人の名前が浮上した。
「今回はあくまで第１陣。今後第２陣、第３陣と芋づる式で関係者を逮捕していく」。そう力を込めるのは捜査関係者の一人だ。
６日に逮捕されたのは、住吉会系暴力団組長三戸慶太郎容疑者（４９）、会社役員早川和男容疑者（３８）、接骨院関係者ら計１４人。組長らは共謀し、２０１１年８月～１３年６月、東京都杉並区の接骨院で、組員や知人の保険証を悪用して架空の施術記録を作成。療養費や診療報酬をさいたま市などに請求し、計４５万円をだまし取った疑いが持たれている。
手口は、患者役に受診するように指示し、初回だけ受診させ、その後はその保険証を使って何度も通院したとする架空の施術記録を作成し、都内の自治体など健康保険事業を運営する「保険者」１００機関以上に療養費を架空請求し、だまし取るもの。その総額は１億円を超えるとみられる。
捜査関係者によると、同様の手口は都内の医院や千葉県の歯科医院でも行われ、不正に得た金が暴力団の資金源になったとみて調べている。
「今回逮捕されたのは、この詐欺スキームを作った主犯格。別の暴力団も関与しており、近日中にその組の幹部も逮捕されるだろう」（同）
叩くならまず“親玉”から！ということだろうが、当局の狙いはこれにとどまらない。事情を知る関係者の話。
「今回逮捕された組長と近日中に逮捕される幹部は同じ傘下で、その上には武闘派で知られる関東の有力組織がいる。この組織は山口組分裂後の鍵を握るとされる。当局はそこにメスを入れたい」
第２陣は一緒に詐欺スキームに乗っかって利益を得た医療関係者たちになりそうだ。
「東スポが１面でやった都内でクリニックを経営していた美人女医タレントＸもその一人。テレビで散財ぶりを自慢していましたが、それも不正に得た金だった可能性がある。すでに所属事務所はＸを事実上、クビにしたそうです」（テレビ関係者）
最後の第３陣は数百人のニセ患者役。暴力団関係者があっせん業者を使い、ニセ患者となるフリーターや学生、キャバクラ嬢、お笑い芸人など５００人超を１万～２万円のギャラで集めていた。
ニセ患者の一人として、お笑い芸人・しあつ野郎（３７）の名前が捜査線上に挙がっていることも判明した。特技の指圧から指圧野郎としてデビューし、２００８年に芸名をしあつ野郎に改名。ものまねネタとしてオール巨人、ケンドーコバヤシ、ジョン・カビラ、アジャ・コングなどが得意のピン芸人だ。捜査関係者によると「彼は自分も患者役として報酬をもらっているほか、周辺のお笑い芸人仲間５～６人にもバイトとして紹介していた」という。
しあつの関係者は「とても詐欺などやれるような男じゃないですよ。今回、主犯格とされる暴力団関係者、接骨院経営者などとの交流は一切なく、美容関係の一般の知人からの紹介で行き、巻き込まれただけ」と釈明している。犯罪と知ったうえでの関与かどうかについても「本人は犯罪に利用されるとは思っていなかった。芸人仲間数人を紹介したが、紹介したことでマージンをもらったりも一切していない」（同）と仲介役を完全否定している。
捜査関係者は「受診してお金がもらえるバイトという話自体、怪しいと思うのが普通でしょう」と厳しい目を向けているため“巻き込まれた”では済まない可能性が高い。