農林漁業者らが経営し、農村の暮らしを体験できる「農家民宿」の開業が、京都市郊外で相次いでいる。市が今年、政令指定都市としては初めて関連法の規制を緩和したことを受け、左京区久多に1軒、右京区京北に2軒が誕生した。外国人観光客の呼び込みに成功している宿もあり、市は「農村部の収入や地域振興の資源になれば」と期待する。
京都市街地からバスに揺られること1時間強。右京区京北上弓削町で4月に開業した「徳平庵」は、かやぶき屋根の古民家を1棟まるごと借りられる宿として欧米人らに人気を集めている。
オーナーの植田秀男さん(59)はオートバイで欧州縦断した経験があり、今度は自身が旅人をもてなしたいと奮起した。京北の食材を使った料理体験や英語での観光案内がうけ、外国人向け宿泊サイトで高評価を獲得。植田さんは「今後は海外の宿泊客と地元の学生が触れ合えるカフェも作りたい」と話す。
今秋オープンした「遊月」(同区京北弓槻町)は、京北の築112年の古民家に移住したばかりの夫妻が営む。友人を家に招くのが好きで、中高年の人たちがのんびりできる「田舎の家」を作りたいと開業を決意した。西村眞夫さん(65)は「出会いを楽しみながらゆったり経営し、月1組でも来てもらえれば満足」とほほ笑む。
市は農家民宿の開業を促すため、自宅の風呂やトイレを宿泊客も使用可能とするなど、3月に旅館業法や消防法の規制を緩和した。3軒に加えて現在、京北や久多でさらに4軒が開業を検討している。市は「問題の『民泊』とは違い、安心して泊まってもらえる。数が増え、観光客の受け皿になれば」と期待する。