香港政府トップの梁振英行政長官は14日までに、批判を招いている同地での象牙取引を全面的に禁止する措置を打ち出すとの考えを明らかにした。年恒例の施政方針の演説で述べた。
香港は象牙取引の国際的な中心地とされる。環境保護団体「ワイルドエイド」の香港支部関係者は同長官の宣言を強く歓迎する立場を表明。取引の全面禁止を働きかけ続けてきた香港立法会(議会)の議員は政府に遅滞なき実現を求めた。
香港では現在、象牙の輸出入は禁止されている。しかし、取引禁止を打ち出した1989年の国際協定前に承認を受けていた約400人の業者の販売活動は依然認められている。
取引禁止を要求する活動家らはこの抜け道が違法な取引を隠蔽(いんぺい)し、象の密猟などを助長させていると主張。ワイルドエイドは昨年、潜入調査の結果を発表し、象牙の取引業者が密輸など現行の関連法規に違反する行為がいかに容易かを豪語していたとも暴露していた。
アフリカ諸国は慢性的な象牙の密猟行為対策に追われている。牙を狙って殺される象は毎年数万頭に及ぶとされる。犠牲となる頭数が現在の割合で進めば、野生のアフリカ象は約30年内に絶滅するとの見方も出ている。
象牙の主要市場は中国大陸で、富を象徴する奢侈(しゃし)品として一部の消費者に買い求められている。
ただ、中国政府は近年、野生動物の製品購入を中止させるキャンペーンを打ち出し、象牙取引も締め付けている。英国のウィリアム王子は中国の国営テレビに出演し、子どもたちに最後の象、サイや虎が死ぬ悲劇を伝えないようにしようと呼び掛けたことがある。
米国のオバマ大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席は昨年、米国で首脳会談を行った際、猟の賞品用としての象牙輸入を中止させる計画も明らかにしていた。両首脳は象牙の国内取引を阻止する重要かつ時宜を得た努力を行うことでも一致していた。