大規模デモ 総統府前に11万人超 黒シャツ着用 「密室協定」批判
台湾が中国と結んだ「サービス貿易協定」に反対する台湾の学生らが立法院(国会に相当)議場を占拠している問題で、学生らが全土に呼びかけた大規模抗議デモが30日、台北の総統府前で行われた。警察当局によると11万人超が参加。同協定の承認をめざす馬英九政権にとって打撃となりそうだ。
◇
学生側は35万人以上が参加したと主張している。
「弱小産業の切り捨てにつながる」と同協定に反対している学生らは、委員会審議を打ち切った与党、中国国民党を非難。協定は事前協議を経ていない「黒箱(密室)協定だ」と批判するなど、デモ参加者の多くは黒シャツ姿で臨んだ。
最大野党、民主進歩党の幹部らも姿を見せ、反対運動の象徴となっているヒマワリの花を手に「民主主義を守れ」「サービス貿易協定反対」と連呼。学生らのリーダー、林飛帆氏(25)は、中台の協定を監視する「新法の下での再審議」などを要求し、立法院の占拠継続を表明した。
一部学生が23日夜に行政院(内閣)庁舎に突入した際は強制排除で多数の負傷者が出たため、当局はデモを「理性的、平和的」に行うよう呼びかけつつ、不測の事態に備え警察官数千人を投入した。
一方、協定承認をめざす国民党関係者も、台北市内でデモを行い「議場を返せ」と訴えた。
馬英九総統は29日夜の記者会見で、改めて協定撤回を拒否したが、中台協定を監視する制度については「(5月末の立法院の)会期終了前の法制化を支持する」と学生らの要求に一部応じる姿勢を示した。だが、占拠を続ける学生らは不十分だと主張、混乱収束のめどは立っていない。
大規模デモ 学生運動 草花の名、掲げる 3度目…今回は「ヒマワリ」
台湾の総統府前で30日行われた大規模デモで、中核となったのは、3月18日から立法院を占拠している台湾大学などで組織された野党色の強い学生運動だった。1987年の戒厳令解除後、台湾での学生運動は今回で3度目。いずれも草花の名を掲げている。中国国民党政権による内政運営や中台関係への影響が注目される。
シンボルの花から「ヒマワリ学生運動」(太陽花学運)と銘打った今回は、台湾大学大学院生の林飛帆氏らが指導。行政院突入で逮捕者を出した後も馬英九総統との対話を拒み、30日のデモまで学生の動員態勢を維持した。
台湾では、「世界最長」とされた49年から87年までの戒厳令下で、学生運動を含む当局批判の街頭活動が全面的に規制されてきた。違反したケースでは憲兵隊による鎮圧や、首謀者の軍法会議での処罰が80年代初めまで繰り返された。
戒厳令後で最初の学生運動は、90年3月、約6千人の学生が台北中心部の当時の国民党本部周辺で繰り広げた「野ユリ学生運動」(野百合学運)だった。1週間に及んだ座り込みは、当時の国民党独裁体制を支えた「国民大会」の廃止や、国共内戦体制の根拠だった憲法臨時条項の撤廃など、本格的な政治の民主化を要求。当時の李登輝政権は、学生が求めた民主化を段階的に実行に移した。
2度目は、2008年11月をピークとした「野イチゴ学生運動」(野草苺学運)だ。発足間もない馬英九政権に対し、対中政策や集会規制などをめぐり抗議。今回の運動を指導する林飛帆氏らは「大学時代に参加した野イチゴ運動に啓蒙(けいもう)された」と発言。30日も当時と同じ黒服姿でのデモ参加を呼びかけるなど、これまでの学生運動を受け継ぐ姿勢を示した。
大規模デモ、対中貿易協定に反対
台湾の台北(Taipei)で30日、台湾が中国と締結した「サービス貿易協定」の撤回を馬英九(Ma Ying-jeou)総統に求める大規模なデモが行われ、主催者発表で50万人、警察発表で12万人が参加した。
馬総統は前日、中国と交わされる全協定の内容を監視する新法を導入するとの譲歩案を提示していたが、総統府につながる通りはこの日、黒シャツを着て「民主主義を守れ。サービス貿易協定を撤回しろ」と書かれたはちまきを付けるなどした人々で埋め尽くされた。
「馬総統の提案は善意のように見えるが、注意深く見るとわれわれの要求に応えていないことは明らかだ」と学生らを率いる陳為廷 (Chen Wei-ting)氏が演説すると、群衆からは万雷の拍手が起こった。「われわれは国民の決意を示すためにここに集まったのだ」
集会が平穏に解散するにあたり、学生リーダーの林飛帆(Lin Fei-fan)氏は「皆さんは台湾の歴史に新たな章を書き入れた…この勝利は台湾のすべての人のものだ」と群衆に語った。「この集会は、台湾と中国の関係を規定する力をわれわれに与えるものだ。台湾の未来は台湾国民全員のものであり、われわれの未来は自分たち自身で決めるのだと、政府に言いたい」
台北では、デモ隊による立法院(国会)の占拠が3月18日から続いており、現在でも約200人が議場にとどまっている。1週間前には、デモ隊の一部が行政院(内閣)の建物内に突入し、強制排除に乗り出した警察と衝突、100人以上が負傷した。
「サービス貿易取り決め」撤回要求デモ 参加者11万人突破
警政署は30日、中国大陸との「サービス貿易取り決め」の撤回を求める学生団体の呼びかけに応じた一般市民らが総統府前などで行った抗議デモの参加者は同日午後4時の時点で最大11万6000人に上った模様だと発表した。
警政署によると、午後1時から始まったデモの参加者は同2時の時点で総統府前の凱達格蘭(ケタガラン)大道、中山南路、立法院内外などを合わせて8万人を突破し、同4時にはこの日最高の11万6000人を超えたと発表した。
その後人数は減少したものの、予定終了時刻を過ぎた19時半過ぎにも会場周辺には依然多くの人が残り、サービス貿易取り決めの撤回を訴えた。
一方で主催者側はデモ参加者が50万人と公表。これに対して警政署はカルフォルニア州大学バークレー分校のハーバート・ジェイコブス教授が提唱した国際的に採用されている方式に基づいて推計したとしている。
また、台北メトロ(MRT)は、会場への最寄り駅となった台大医院駅で混雑のため午後2時過ぎから同3時半ごろまで電車の通過措置を行ったほか、台大医院と中正紀念堂両駅の乗降客数が12万3千人を超え、先週日曜日と比較して7万人以上増加したと発表した。
台湾当局「実弾射撃も辞さず」・・・総統府前などで大規模抗議活動
大陸側との経済協定をめぐって馬英九政権に反発を強めている市民らは、台北市内の総統府前などで30日に大規模が抗議活動を展開する。当局側は29日夜から「夜鷹部隊」と呼ばれる特殊部隊を投入するなどで厳戒態勢を取っている。総統府に突入を試みる者が出た場合などには、実弾射撃も辞さない考えだ。
30日の抗議活動参加のため、台湾全土から馬政権に反対する人々が台湾に向った。台湾メディアによると、学生など若年層だけでなく、70歳を超えた高齢者の姿も見られたという。
台湾では、馬英九政権が大陸側とのサービス貿易協定の発効を強行しようとしたことで、学生らが反発。個別の政策に対してだけでなく、政権側に力ずくの弾圧が顕著として、「非民主的」、「ヒトラーと同じ」などと、馬英九総統そのものに対する非難へと、事態はエスカレートしつつある。
大陸サービス貿易については、与党側が立法院(国会)で「条文ごとに審議する。一括での採決はしない」などと約束しながら、「時間切れ」を理由に審議を終了させ、一方的に大陸と合意した通りに採択の宣言をしたことで、反対派が態度を硬化させた。馬政権には原発建設について2013年に「国民投票にかける」と表明しながら、その後は一向に「国民投票」に言及しなくなったこともあり、「約束を踏みにじってでも、目的の実現には手段を選ばない。民主的方法とは対極的な、まさに独裁」といった批判が急速に高まった。
馬総統に反対する学生らは18日に立法院(国会)に突入。30日正午現在も立法院議場などの占拠を続けている。別の学生一派は23日に行政院(内閣)に突入。行政院の学生は24日までに警察により排除されたが、流血の事態になった。
メディアの報道では「残虐なシーン」に規制がかけられ、映像もぼかされるなどしたが、抗議に参加した人がインターネットを通じて、警官隊に殴られて血まみれになる人などの姿を「これが真実だ」などとして大量に公開し、台湾社会はショックを受けた。
李元総統も公開の場で涙を流し、言葉をつまらせながら「若者がかわいそうだ。政府は彼らの意見を聞くべきだ」などと、馬政権を強く批判した。
30日の大規模抗議に先立ち、台北市の〓龍斌市長は「行政院の強制排除でわれわれは教訓を得た。市政府も教訓を得た」と表明。市政府や警察は学生側と意思疎通のパイプを設け、「何か魂胆を持つ者が、学生あるいは警察に面倒や災難をもたらすことを避ける。前回(行政院における強制排除)よりも必ずうまく処理する」、「(抗議側に)求められるのは平和的、理性的に意志を表明することだ。市政府はソフトに処理する」と述べた。(〓は「赤」におおざと)
しかし、警察側は29日から厳戒態勢を敷いた。2000人の警察官を投入したが、抗議側の人数にははるかに及ばない。総統府は台湾の政治上、行政院とは比較にならないほどの重要性を持つ。そのため、当局側は憲兵特勤隊(特殊部隊)である「夜鷹部隊」も待機させ、何重ものバリケードを設けた。
憲兵特勤隊はテロ行為への対応や暴動鎮圧などを任務とする部隊で、「さまざまな事態に対する対応を想定。「状況がコントロールできなくなった場合には、実弾射撃による制止も辞さない考え」という。
安全性向上目指して 食品会社の強制登録制度4月1日から
衛生福利部食品薬物管理署は4月1日からインターネット上に「食品業者登録プラットフォーム」を開設する。
食品の製造、加工、輸入及び販売を手がける企業全てが対象となる登録制度で、今後は登録業者にだけ営業を許可するとしており、国による食品会社の業務内容の把握と、業者側の自主管理の促進や衛生安全対策の強化を通じて、産業全体の発展を目指す。
食品薬物管理署の姜郁美副署長は、製造、加工、輸入業者は5月1日まで、販売業者は10月1日までに登録を終える必要があるとしており、未登録や、内容に不正が見つかった場合は3万〜300万台湾元(約10万〜1000万円)の罰金が科されるとして注意を呼びかけている。
大ヒット韓流ドラマが日本で“だけ”はやらない理由、日韓対立で韓流規制
新浪網は記事「日本ネットユーザーはなぜ“星から来たあなた”のファンにならないのか?テレビ局が韓ドラ放送禁止で韓流を規制」を掲載した。日韓対立が要因で日本の韓流は力を失ったと分析している。
台湾・NOWNEWSは記事「日本ネットユーザーはなぜ“星から来たあなた”のファンにならないのか?テレビ局が韓ドラ放送禁止で韓流を規制」を掲載した。
13年12月から14年2月まで韓国SBSテレビで放送されたドラマ「星から来たあなた」がアジアを席巻している。中華圏でも爆発的な人気で、台湾では議会質問で言及された。中国本土でも爆発的な人気となり、王岐山(ワン・ジーシャン)中国共産党中央紀律委員会書記が見たことを明かすなど、政治家まで注目するほどの大ブームとなっている。
「星から来たあなた」でアジアが沸き立つなか、唯一取り残されているのが日本。ネットユーザーからも同作放映を求める声はさほど聞かれない。この理由はなぜか?背景にあるのは竹島問題と歴史認識問題に端を発した日韓対立だ。韓国との対立が続くなか、テレビ局の韓流ドラマ枠は次々と打ち切られてしまった。テレビ放映がないなか、韓流は日本で厳しい状況を迎えている。
李登輝元総統、国是会議などの開催呼びかけ
李登輝元総統(=写真)は30日、会員制交流サイトのページを更新し、中国大陸との「サービス貿易取り決め」の撤回を求める学生団体らの呼びかけに応じた一般市民らが、総統府前で大規模なデモ活動を展開していることに関して、参加者に理性的な抗議活動を求めるとともに、政府に対して「公民憲政会議」や国是会議の開催を呼びかけた。
学生団体らが立法院(国会)を占拠してからきょうで13日目。李氏は学生らの行動について、国家への情熱や考え方、未来の追求など、台湾の民主的な力を全世界に向けて示し、国への希望を見せてくれたと評価した。
また、各界のリーダーや有識者たちが共同で責任を負い、国の将来について考え討議することを望むとして、市民会議や国是会議の開催に期待を寄せたほか、国家の指導者に対しては庶民の考えを聞くべきだとし、具体的かつ誠意ある対応を通じて問題の解決を目指すことが必要だとする考えを改めて示した。
東京の桜が開花、花見シーズンがやって来た!
3月下旬、例年に比べると気温が高かった東京の桜が25日に開花。「気象庁が、花見のベストシーズンは3月31日前後だと発表した」と、台湾メディアが伝えた。(イメージ写真提供:(C) NOBUYUKI YOSHIKAWA/123RF.COM)
3月下旬、例年に比べると気温が高かった東京では、25日に桜の開花が宣言された。「気象庁が、桜の見頃は3月31日前後と発表した」と、台湾メディアが伝えた。
日刊紙「中國時報(チャイナ・タイムス)」は、「東京大手町の25日の気温は、例年同時期よりも7.7度も高く、今シーズン最高気温を記録した」ことを伝え、「気象庁はソメイヨシノの開花を宣言し、東京は今月末に満開を迎えると予想。ほか神奈川、広島、大分、山口地区も桜の開花ニュースが広まった」と、台湾の人々に知らせた。
日本の桜にあこがれて、花見をしたいとばかりにこの時期に旅行を計画する台湾の人々は、少なくないだろう。東京では上野公園や新宿御苑など、観光地として知られているエリアが台湾の人たちにとって行きやすい場所だ。
台湾にも桜はあり例年旧正月が過ぎた頃、1月−2月に美しい花を咲かせる。ソメイヨシノよりも色が濃いヤマザクラやカンザクラが多いようなので、色鮮やかに感じられる。台北市の桜の名所は陽明山や中正紀念堂とのことなので、開花時期に台湾を訪ねた際は見物に出向き日本の桜と比べてみたいものだ。また、ソメイヨシノの淡くて薄いピンク色のはかない桜は日本特有とも思われ、台湾の人々を始め世界各国の人々を魅了するのではないだろうか。
海賊王になれる? マンガ「ワンピース展」台湾で開催へ
人気マンガ「ワンピース」の特別展「尾田栄一郎監修ワンピース展《原画×映像×体感 航海王 台湾》」が今年7月1日〜9月22日に台北の華山文創園区で開催される。複数メディアが伝えた。
日本で1997年から連載されているワンピースは世界35カ国で翻訳され、2013年までの累計販売冊数は3億冊を突破した世界的人気作品。連載15周年を記念して東京と大阪で2012年に開催されたワンピース展には80万人の観客が来場した。今回は海外初の実施となる。
台北の特別展では原作者の尾田栄一郎さん監修の下、「麦わら一味」の世界が台湾で再現され、豊富な原画や映像、大型フィギュアなどが入場者を迎え入れる予定。また、今月26日に台湾のファンに向けて公開された特別イラストには、小籠包(ショーロンポー)やマンゴーカキ氷、伝統楽器の琵琶などを手に持ったキャラクターが描かれており、すでに現地のファンの注目を集めている。
エイサー、大中華区トップが退任へ[IT]
パソコン(PC)大手の宏碁(エイサー)は27日、同社の世界資深副総裁で大中華区総経理も兼任する林顕郎氏が、4月30日付で退任すると発表した。同社は今年からグループ総裁兼執行長に1961年生まれの陳俊聖氏が就任、クラウド事業の責任者に創業者の施振栄(スタン・シー)董事長の息子である施宣輝氏が就くなど経営陣の若返りを加速している。
28日付経済日報などが伝えた。中国区総経理の後任には大中華区副総経理の張永紅氏が、台湾区総経理の後任には社内組織「経営変革委員会」で特別助理を務める黄鐘鋒氏がそれぞれ就く。
林氏は83年入社。主に中国と台湾の業務を指揮し、2011年から大中華区総経理を務めていた。施董事長は「直近2〜3年でPC産業と市場を取り巻く環境は大きく変化したが、台湾と中国の業務で落ち込みがみられなかったのは林氏の力量によるところが大きい」と功績をたたえている。林氏は退任後、1年にわたり同社の顧問を務める予定。
同社はこのほか、外部から経営をチェックする独立董事として、台湾大学国際企業学系の李吉仁教授と、米アズキシステムズの創業者で董事長の呉錦城氏の就任を、ファウンドリー(半導体の受託製造)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の曽繁城・副董事長の留任を発表した。同社は「3人の独立董事が豊富な経験を生かして企業の変革の力となることを望む」としている。
李登輝元総統が涙「学生がかわいそうすぎる。政府は彼らの声聞け」
台湾で、馬英九総統が大陸と新たな経済協定の実現を強引に進めようとしたことがきっかけで本格化した反政権運動が、さらに緊迫した局面を迎えつつある。李登輝元総統(91歳)は28日、関連する問題をテーマとする講演会に出演した際に、「学生らがかわいそうすぎる」と涙を流しつつ、学生らや民衆の声を聞かない現政権を批判した。日本でも30日午後に台湾人のよる抗議デモが予定されるなど、運動は海外在住の台湾人の間でも広がりつつある。
■目立つ李登輝元総統と馬英九総統の「落差」
李登輝元総統は、総統代行だった1990年、改革を求めて多くの学生が抗議運動を行った際、運動が本格化しはじめたかなり早い時期に学生代表を総統府に招き対話を行い、民主化への具体的取り組みを盛り込んだ「共同認識」を発表した。
「認識」には、学生側が李元総統の約束を無条件に信じていたわけではないことを示す部分もあったが、李元総統はその後、各方面における民主化を断行した。李総統は大きな危険をおかしてまでも、強硬な保守派も存在する国民党を大きく動かし、民主化を断行した。台湾は中華系社会として初めて、本格的な民主制度を獲得することになった。
李元総統は28日、「政府のトップは学生がなぜ、このような行動を起こしたか理解せねばならない。自らの措置にどんな過ちがあったか、反省せねばならない。反省しないようでは、政府とは言えない。庶民の声を聞いてこそ、正しい政府だ。国事会議を招集して(大陸との)サービス貿易協定の問題を討論することが好ましい」などと述べた。
■李元総統、国民に向き合おうとしない馬政権を厳しく批判
李元総統は、馬政権がサービス貿易協定について、国民に十分な情報を与えず、不明瞭な説明を繰り返しつつ実現を強行しようとしていることを厳しく批判した。
協定反対派の主張は「協定により台湾が中国経済に飲み込まれる。経済だけでなく、台湾社会そのものが危機的状況になる恐れがある」に要約できる。反対派の中には、「協定は全く認められない」という強硬派から、「危険を防止するため、監視・監督のためのメカニズムを設けるべきだ」などと、同協定を台湾にとって、より有利にすべきだとの具体的主張を示す人もいる。馬政権が、大陸側との合意内容をすべてそのまま通そうとしたことで、問題が大きくなった。
協定賛成派は、監視・監督のためのメカニズムについて「すでに盛り込んでいる」と主張。李元総統は「どこにある? どの条文だ? 説明して示してみよ。そのようなたわごとを言ってはならない」と、賛成派を厳しく批判した。
■李元総統が、台湾の「第2次民主改革」を主張
李元総統は、自らが手がけた台湾におけるこれまでの民主化を「第1次民主改革」と表現し、「第1次民主改革はすでに限界に達した。台湾にとって第2次民主改革が、喫緊の課題」と主張。「第2次民主改革」の方向として、過度に集中している中央への権力の分散、台湾各地がすべて発展するメカニズムの構築、資源の公平な分配、各地の民衆が同レベルの基本的福祉を受けられるようにすることなどを挙げ、「権力を民衆に返還せねばならない。政策が本当の意味で民衆の願いにより決定されるようにせねばならない」と強く語った。
李元総統は、馬政権がサービス貿易協定の内容を人々に知らせないままで実現しようとしたことで、大きな問題になったと指摘。「(政権側が協定に自信があるなら)民衆に参加させ、話を聞き、協定について正しく理解するよう啓発に努め、民衆を協定について監督する立場に置くべきで、こんな圧政をすべきでない」と述べた。
自らが説く「第2次民主改革」については、「もし不明な部分があれば、李登輝基金に問い合わせていただきたい。詳細に説明します」と述べた。
■「反馬英九」が海外の台湾人にも広く波及
サービス貿易協定については、立法院がいったん、事実上の撤回の判断を示したが、学生らの抗議運動は鎮静化するどころか、さらに拡大しつつある。馬英九総統は25日になり立法院議場を占拠した学生らとの直接対話を望む姿勢を示したが、学生側が求めた「公開討論」を拒絶したなどで、実現していない。
台湾における「反馬(反馬英九)」の動きは、海外在住の台湾人にも広がりつつある。日本でも30日午後2時から、東京、京都、福岡で第2回目の抗議活動が実施される。すでに米国、フランス、英国、ロシアなどでも、抗議活動が実施されている。
米国紙・ニューヨークタイムズの国際アジア週末版にも、「サービス貿易協定反対」の意見広告が掲載された。
中国側は当然ながら「サービス貿易協定」の実現を目指しており、台湾人による反対運動を批判している。国際的に「サービス貿易協定反対」に対する注目が高まれば、「中国当局と台湾人の考え方には大きなギャップがある。やはり別の社会だ」とのイメージが改めて強くなる可能性もある。
**********
◆解説◆
大陸とのサービス貿易協定については、多くの台湾人が内容をよく理解していないという側面もたしかにあり、「ばくぜんとした不安にかられての反対」という場合があることは、否定できない。ただし、大陸側と台湾を「互いに対等な立場にある」ことを大前提として作成され、かつ経済交流について大胆な自由化を盛り込んだ同協定が発効すれば、「小さな台湾が巨大な中国に飲み込まれる」危険が存在することは事実だ。
馬英九政権側は、サービス貿易協定と並び大きな政策課題とされる原発問題についても、2013年3月に「8月を目途に住民投票を行う」と表明しながら、住民投票について言及しなくなり、批判がなおさら高まった。サービス貿易協定についても立法院(国会)で「条文ごとの審議を行う。(批准について)一括採決はしない」などと言いながら、時間切れを理由として「採択」を宣言した。
一連の「強硬姿勢」により、抗議運動の対象は「個別の政策」から「政権そのもの」に変化していった。台湾では、馬英九総統の肖像に「チョビ髭を施し、ハーケンクロイツも添える」などで、ヒトラーになぞらえるイラストも、次々に発表されている。
ヒトラーは、民主的な制度のもとで合法的に選挙に勝利し、政権を獲得。しかし政権獲得後は極めて強引に独裁の度合いを高めて行った。馬総統をヒトラーにたとえる見方が強まっているのも、そのあたりが“共通”とする認識にもとづくと考えられる。
台湾には、中国共産党に対して根強い不信感・警戒感がある。「最初はきれいごとを並べて相手に取りいるが、自らに有利な状況になると前言をひるがえす。最終目的の達成には手段を選ばない」といったものだ。教育の場で中国共産党に対する警戒心を過度にあおりたてた歴史もあるが、現在の中国当局の言動や訪台した中国人の姿を見て、台湾の人々が「やはりそうだ」と思えてしまうことも多いという。
馬英九総統は、中国大陸との関係を改善することで台湾に恩恵をもたらす政策を続けてきた。台湾経済に利益をもたらしたことは事実だが、人々の間の根強い「大陸への警戒心」を過小評価した面は否めない。また、李登輝、陳水扁と台湾では2代続いて本省人(日本の敗戦以前からの台湾住民とその子孫)政権が誕生したのに対し、馬英九総統は外省人(香港生まれ。本籍は湖南省)だ。馬総統には、「大陸出身者が、大陸と親密な関係の構築に尽力する」ことで発生する、台湾人の不信感や警戒心を解く努力も不足していたと言える。最近なっての強引な政局運営がきっかけで多くの人々が「これが馬英九政権の本質だ」と考え、不満が一挙に噴出した
台湾では11月下旬に、主要7地区の首長を選ぶ統一地方選が、2016年には総統選挙がある。一方で、馬英九総統は2013年後半ごろから、支持率が10%を切るという状態が続いている。そのため、馬総統(国民党主席)では選挙を戦えないという不満が、国民党内で噴出する可能性も否定できない。
しかし、国民党には「自党の代表が総統になれば、自動的に党主席(党首)になる」という党紀がある。さらに憲法の規定により、総統の罷免は極めて困難だ。台湾における政治の混乱は、トップである馬総統が政局運営で“悪手”を繰り返したことで発生した面が強い。さらに、そのトップの交代は規則上難しく、前例もない。混乱の出口はまったく見えてこない状態だ。