台湾総統選が16日投開票され、独立志向の野党・民進党の蔡英文(ツァイインウェン)主席(59)が与党・国民党の朱立倫(チューリールン)主席(54)、親民党の宋楚瑜(ソンチューユイ)主席(73)を大差で破り、当選した。8年ぶりの政権交代で、総統に女性が当選するのは初めて。台湾メディアの集計では、蔡氏の得票率は6割近い圧勝。民進党は同時にあった立法院(国会、定数113)選で初めて過半数を得た。
蔡氏の得票率は、過去の総統選で最高だった2008年の馬英九(マーインチウ)総統の58・4%に迫る勢いだ。民進党候補としては04年の陳水扁前総統の50・11%が最高だった。
立法院選では、民進党が改選前の40議席から躍進する一方、国民党は64議席から大幅に議席を減らしている。朱氏は16日夜、党主席の辞任を表明した。一昨年3月に学生らが立法院議場を占拠した「ひまわり学生運動」から発展した新政党「時代力量」が小選挙区で3議席を得た。
民進党には、台湾統一を悲願とする中国が強い警戒感を抱く。蔡氏は中台関係の「現状維持」を掲げ、挑発的行動は取らないなどと明言。馬政権が昨年11月に中台首脳会談を行うなど対中傾斜を強めたことで、台湾市民の間で逆に台湾人意識が高まり、対中政策を不安視する声は広がらなかった。
ただ、中国は「一つの中国原則」をめぐる1992年の中台間のやりとりを「92年コンセンサス」と位置づけ、受け入れを台湾との交流条件としている。蔡氏や民進党はこれを「共通認識」と認めていない。選挙戦終盤で、やりとりの内容自体は受け入れる立場を明確にしたが、中国は当面圧力をかけながら蔡氏の出方をうかがうと見られ、駆け引きが続きそうだ。