イラク北部クルド人自治区で過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」から逃れた少数派ヤジディ教徒らが暮らす難民キャンプ。ここには、ISISに連れ去られて自爆攻撃の訓練を受けながら、何とか運良く生還した少年たちもいる。恐ろしい体験が幼い心に残した傷は深い。
ナシル君(仮名)は12歳。今は母親と再会し、学校にも通っている。顔や声、本名は放送しないでほしいと前置きをしてから、捕らわれの日々を振り返った。
「60人くらいの子どもが一緒だった。みんな空爆を一番怖がっていた。地下のトンネルに避難させられ、不信心な米国人がぼくらを殺そうとしていると聞かされた。だけどISISの人たちはぼくらを愛していて、親よりも良く面倒を見てくれるというんだ」
「訓練の時には、お前たちの親は不信心だ、家へ戻って彼らを殺すことが初仕事だ、と教え込まれた」
ISISは子どもを戦闘に動員したり、宣伝ビデオに少年を出演させたりしている。その陰には恐ろしい現実があった。
連れ去られた子どもたちは全員、同じような思想をたたき込まれる。教官らはナシル君に「お前の家族は我々だけだ」と言い聞かせた。