米国防総省の実用試験・評価担当部門の責任者は6日までに、米軍の次期主力戦闘機F35の導入問題に触れ、実戦配備への適合性が確認される前に同機の大量調達を決めた方法にはリスクがあると警告する報告書をまとめた。
同機の開発では、コスト増大や遅延がこれまで再三表面化している。開発費は計2457機分で約4000億ドル(約47兆円)と見積もられ、初期段階での推定数字の約2倍となっている。
米空軍、海軍や海兵隊仕様の機材が開発される他、日本を含む海外の10カ国も導入を計画している。製造元はロッキード・マーチン社で、敵レーダーに気付かれない隠密飛行が可能な第5世代の戦闘機と称される。
今回の報告書は2015年に実施された同機の試験評価を盛り込んだもので、実用試験・評価担当のマイケル・ギルモア局長がまとめた。同氏はこの中で国防総省は大量導入方式の採用で調達費用を抑えることなどを狙ったと指摘。ただ、この方式は、満足すべき実用試験が完了する前に最大で270機も引き受けるリスクにもつながると警告した。
また、米軍がこれまで購入してきたほぼ全ての航空機は実戦配備される前、改善の措置が必要だったとの経緯にも言及。さらに、大量導入を前もって決めることで製造元が性能の欠陥修正に取り組む意欲を削ぐ可能性にも触れた。欠陥修正の項目は実用試験が続けば増えるのが通例とも述べた。
これに対しロッキード・マーチン社は今回の報告書に触れ、「指摘された全ての問題点は既に知られたことであり驚きはない」との声明を発表。同機の開発過程は8割終えているとし、正さなければならない欠陥も承知していると述べた。その上で、海兵隊仕様のF35機が昨年7月、実戦配備に必要な最低限の性能を満たしていた事実に注意を向けた。
F35機の大規模発注については米上院軍事委員会のマケイン委員長(共和党)も異議をはさんでいる。CNNの取材に生産に入った段階で問題点の発生が判明し、修理に多額の費用がかかれば納税者の負担になると指摘した。
単座式のF35機は空中戦、対地攻撃、情報収集や監視偵察飛行などの性能を持つ。また、同僚機や司令官らとの即時のデータ共有やレーダー網に探知されずに敵の空域に入り込むステルス飛行も可能。パイロットは特殊ヘルメットの着用で状況認識の視認を360度の範囲で出来る。