中国の大型連休となる旧正月の春節(今年は8日)を前に、多くの中国人観光客が日本を訪れている。家電や化粧品を大量購入する「爆買い」だけでなく、美容やカラオケといった体験型の施設が人気だ。外国人専用居酒屋や団体旅行客向けに転身するラブホテルなど、受け入れ側も躍起だ。
■ニキビ治療が旅行の目玉
5日、東京・銀座の美容皮膚科「シロノクリニック銀座」。春節に合わせて上海から来日した化粧品会社員女性(28)が、顔のニキビ跡を消す治療を受けていた。3回目の来日で、ニキビ治療が旅行の目玉という。「これまでは買い物が中心だったが、今回は美容。日本では最新の治療を受けられるので安心だし、効果が楽しみ」と話した。
クリニックを運営する「シーズ・メディカル」が昨年、中国語のホームページを作ったところ、中国人客が一気に増えたという。1回の平均単価は日本人の5倍の50万円。広報担当者は「顔のしわやたるみをとるコースが人気です」。
銀座の美容室「UNIXキラリトギンザ店」では、昨年5月ごろから外国人観光客が増え始めた。中国や台湾などを中心に、多い時は週20人ほど。パーマ、ネイルなどの施術を希望する人も増えているという。松本晃店長は「日本の美容院は接客が丁寧で、技術も高いとして満足してもらっているようだ」と話す。
カラオケも人気スポットの一つ。東京・新宿の歌舞伎町では、カラオケ店のシダックスが昨年12月、家電量販大手ビックカメラと組んで、訪日外国人向けの施設をオープンさせた。ビル1階と地下に化粧品や美容家電などを売る免税店が入り、2~10階が「レストランカラオケ店」。外国人を案内するコンシェルジュも配置した。その一人で台湾生まれの兼西泰志さんは「買い物から食事、カラオケを一つのビルで気軽に楽しんでもらえる」と話す。
観光庁がまとめた昨年10~12月の中国人観光客の支出は、1人あたりの買い物代が16万円とほかの国の観光客に比べて突出して高い。前年同期と比べて3万円ほど伸び、「爆買い」意欲は旺盛。一方、「娯楽・サービス」にかける費用も5609円と、前年に比べ4倍近くに伸びている。(岡林佐和、奥田貫)
■ラブホ転身、ネオンも好評
観光客を受け入れる側も知恵を絞る。
5日朝、愛知県稲沢市。西洋の城を模した元ラブホテルを前に、記念撮影する母子ら中国人ツアー客約30人の姿があった。
この「ホテルハバナ」は昨年11月、中国人ツアー客専門のホテルに模様替えした。名神高速沿いにあり、インターまで車で5分。関西、関東、北陸にも行きやすい立地が受けて、2月は連日30~40人の予約が入っている。経営者の高野晃二さん(60)は「平日でも部屋が埋まるのはありがたい」と話す。
ラブホテルの利用客は5年前の半分ほどに減り、打開策として中国系の旅行会社と提携した。中国人従業員を雇い、30の客室の半分をダブルからツインに変えた。部屋は30~50平方メートル。「部屋も風呂もビジネスホテルより広い」と人気で、屋上に光るヤシの木のネオンも好評という。