ドイツ南部バイエルン州で9日に起きた列車同士の正面衝突事故は、警察によるとこれまでに10人の死亡が確認された。17人が重傷、少なくとも63人が軽傷を負い、1人の安否が確認できていない。
衝突は現地時間の9日午前7時ごろ、州都ミュンヘンの南東約60キロに位置するバート・アイブリング近郊で発生した。2台の列車には合わせて乗客約150人が乗っていた。
この路線は単線で、カーブ地点で2台が正面衝突。記者会見した同国のドブリント運輸相は、「線路がカーブしていたため運転士には互いが見えていなかったと思われる」との見方を示した。
当時、列車は100キロあまりのスピードが出ていたと推定され、衝撃で車両1両が脱線した。
犠牲者の身元については確認作業が続けられているが、運転士2人も死亡したとみられる。
同じ線路上で列車同士が正面衝突した原因は分かっていない。列車に搭載されていたデータレコーダー3基のうち、これまでに2基が回収され、3基目も車体の残骸から回収できる見通し。当局はデータレコーダーを解析して原因の究明を急ぐ。
捜査ではテロなどの可能性よりも、人為ミスまたは技術やインフラに問題があった可能性に重点が絞られている様子だ。
当局によれば、この路線には自動停止装置が設置されていて、列車が本来とは違う線路を走行すると自動停止するはずだった。自動停止装置は、2011年にドイツ東部で10人の死者を出した衝突事故を受け、全土の鉄道に導入されていた。
鉄道会社の幹部によれば、事故を起こした列車は2台とも運転士とインストラクターが乗務しており、4人全員が赤信号を見過ごすはずはないと思われることから、信号が青になっていたと推定されるという。
列車のうち少なくとも1台は時刻通りに運行されていなかったことも判明。その理由についても捜査が進められている。
現場にはドイツ国内と隣国オーストリアから600人を超す警察官や救急隊が駆けつけ、約3時間がかりで被害者を現場から救助した。現場は斜面の多い山間部にあり、負傷者はヘリコプターや船で病院に搬送された。
この路線はミュンヘンへの通勤や通学に使われているが、9日はたまたま学校が休みだったため、普段ほど混雑していなかったのが不幸中の幸いだった。