「夢の国」にも格差社会の風が吹き込んだ!? 東京ディズニーリゾート(TDR)を運営するオリエンタルランドが8日、この4月1日から入園料を引き上げると発表した。東京ディズニーランドか東京ディズニーシー、いずれかの施設で一日中遊べる「1デーパスポート」は、従来より最大で500円上がり大人は7400円になる。かなり高いようにも感じられるが、専門家は「仕方ないこと」としたうえで、庶民にはちょっぴり悲しくなるTDR側の“もう一つの狙い”を指摘した。
現在、1デーパスポートは大人6900円、中高生6000円、4歳以上4500円。4月以降は中高生が6400円、4歳以上が4800円になる。ランド、シー両方を1年間自由に使える「年間パスポート」は大人で8万6000円から9万3000円に上がる。
2011年4月に6200円に値上がりし、6000円台に突入した1デーの入園料は、14年4月に6400円。15年4月に現在の価格になったばかりだ。
今年4月以降、仮に父、母、小学生の子供2人の4人家族が1デーでTDRに行こうとすれば、入園料だけで2万4400円、これに園内での飲食代や土産物代、駐車場代などがさらに加わる。今回の発表を受けてインターネット上では「つらい」「行きづらくなる」などの悲鳴が噴出している。
テーマパークといえばユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)もTDRの1デーにあたる「1デイ・スタジオ・パス」が今月から大人7400円に値上がりしたばかり。どちらも、気軽に行けるレジャースポットではなくなっている。
こうしたテーマパークの現状について経済評論家の平野和之氏は「限られたスペースで収益をさらに上げるためには、生産性を上げていく方にシフトするしかないでしょう」と指摘する。
面積が決まっている以上、来園者をさらに増やすのは難しい。TDRは入場制限がかかることもある。混雑状況によっては、当日券が販売中止となり、入場すらできないのだ。
ディズニーランド関係者は「ランドで7万人、シーで5万人くらい入ると、その後に年間パスポートなどで入る人もいることを想定し、入場制限となり、当日券は販売ストップになる感じです。8時開園、8時10分に入場制限ということもありました」と言う。
つまり入場者数の上限があるということだ。そうした中で増収を図るには来園者一人ひとりの入園料を値上げせざるを得ないという。
もちろん、値上げによって来園者数が減る可能性はあるが、そもそもそれも狙いの一つになっている部分もあるようだ。
「言ってしまえば、お金持ちは混雑が嫌い。施設側としては安定してお金を落としてくれる人たちが、ストレスなく過ごせるようにすることが大切なんです。それに、たとえば年間パスが18万円になったとしても買う人は確実に買う。その結果、購入者が3割減ったとしても、全体の売り上げは上がります」(平野氏)
値段が上がっても確実に来てくれる層を獲得している上に、仮に入場者が減ったとしても、園内にゆとりができることに魅力を感じた金持ちに来てもらえる。多くの固定客がいるテーマパークだからこそ、強気の経営に出られるわけだ。
平野氏は「極論を言えば、今後のテーマパークのあり方は、松竹梅ではないけど、所得層別(のサービス)になっていくかもしれません」とも。施設側が、優雅に過ごすためには金を惜しまない人間と、そうでない人間を分けて経営戦略を立てる。これからはそうした傾向がさらに強まっていきそうだ。夢にも格差社会が生じかねない。
もっとも、値段だけを見れば高そうな印象を受けるTDRやUSJの入園料も園内に一日中滞在するのなら、なんとなく“元を取れそう”な感覚はある。平野氏も「値段が上がって年間3回行っていた人が2回しか行けなくなったとしても、その2回には『夢』がある。決して『夢』自体がなくなったわけではありません」とテーマパークが持つ魅力を強調する。
それでも、日本の“ディズニーランド”は、まだ世界一安い入場料で運営している。夢の世界での思い出はプライスレスということか。