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またも軍制服組トップを「粛清」 政権揺るがす“異変”とは

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北朝鮮の朝鮮人民軍「制服組トップ」の粛清がまたも伝えられた。李永吉(リ・ヨンギル)総参謀長の処刑が事実なら、朝鮮労働党による軍支配がいっそう進んだことを意味する。だが、永吉氏の部下だった前線兵士らの間には、金正恩(キム・ジョンウン)政権を揺るがしかねないさらに深刻な“異変”が起きているとも指摘されている。

「嫌疑は後付け」

 複数の北朝鮮消息筋によると、永吉氏は、金日成(イルソン)軍事総合大学の研究クラスを首席で卒業し、主に「野戦畑」を歩んできた。

 砲兵司令部の参謀長当時、金正日(ジョンイル)総書記に指揮能力を認められ、前線の軍団長や作戦局長など軍のエリート階段を駆け上る。軍に強い影響力を持った李英浩(ヨンホ)総参謀長が2012年に突如更迭されたこともあり、制服組トップに躍進した。

 金正恩第1書記の信任も厚かったといわれ、年初の視察でも随行が確認されていた。その人物の「分派活動や権勢非理(汚職)」嫌疑での処刑が伝えられた。

 永吉氏は「原理原則に忠実だ」と評される堅物とされ、消息筋は「嫌疑は後付けにすぎない」とみる。


 党の代弁者とされる黄炳瑞(ファン・ビョンソ)氏が、金第1書記の最側近として軍を統制する総政治局長に就き、党による軍支配が深まるなか、これに異を唱えたため足をすくわれた-。韓国の専門家らもこうした見方を示す。

身長138センチも可

 党側が軍の抑え付けに腐心するのには事情がある。200万人以上が餓死したという1990年代の大飢饉(ききん)を、成長期に経験した世代が前線の小隊長といった軍の中核を占めるようになった。彼らは「政権への忠誠度が最も低い世代」といわれる。

 その後も、深刻な栄養不足で子供並みに小柄な兵士も多く、身長138センチ以上、体重43キロ以上まで入隊基準が緩和されたほどだ。

 配給量の減少が重なって、中国側に越境した北兵士による強盗事件も頻発。慢性的な燃料不足もあり、戦車などを動員した大規模な演習もままならない状態が続いているという。核・ミサイル開発に傾注する背景として、通常兵力の弱体化も指摘されている。

 正恩政権は頻繁に幹部の首をすげ替えることで不満の芽を摘んできたが、党による圧迫が強まれば、さらに前線の士気低下を招く結果になりかねない。

 消息筋は「軍の統制が負の連鎖に陥っているとみられ、強硬姿勢を強める裏で実際には『戦えない軍隊』化が進んでいるようだ」と話す。




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