イラク保健省幹部は25日までに、同国南部バスラ州で昨年11月、放射性物質が紛失し数カ月間所在がつかめない状態が続いていたが、物質を無事に回収したことを明らかにした。
この物質は放射性同位元素イリジウム192で、一時は「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」などの過激派の手に渡った場合、テロ攻撃に悪用されかねないとの懸念も生じていた。無事発見の報に同省幹部は安堵(あんど)の表情を示した。
紛失に至った経緯は伝えられていない。同州の知事は同物質紛失の調査のため委員会も設立していた。
イリジウム192は同国南部ズバイル町の警官派出所近くで見付かり、容器内に入った状態で損傷は見たところなかったとしている。このため放射線の漏出などの心配は一切ないとしている。
容器はノートパソコン程度の大きさだったという。国際原子力機関(IAEA)によると、容器には放射線をさえぎる機能があった。
イリジウム192はバスラ州で事業を進める石油関連企業の請負業者からなくなっていたもので、昨年11月に国際原子力機関(IAEA)に紛失が報告されていた。イラク政府当局者らは先週、物質は盗まれたとも説明していた。
紛失をめぐり2社が責任をなすり付け合う事態ともなっていた。
イリジウム192はガンマ線を放出させるため産業用の放射線写真などに使われる物質だが、バスラ州の請負業者は溶接部分の弱体化など送油管の構造的な問題を調べるため用いていたという。
反核団体の放射性物質の廃棄物問題の専門家によると、イリジウム192から出るガンマ線を至近距離で浴びた場合、致命的な被害が出る場合があるという。ISISなどが入手した場合、都市圏での水道の汚染や放射性物質をまき散らす「汚い爆弾」などに悪用される恐れがあったとも指摘した。