レバノンの首都ベイルート郊外のジュディデ地区で数百メートルに渡ってゴミの袋が積み重なり、「ゴミの川」を思わせる奇怪な光景が出現した。
ベイルート市当局が昨年7月、代替地も確保せず、主要なゴミ処理場を閉鎖したことの後遺症となっている。これ以降、市内の路上にゴミの袋が堆積し始め、業を煮やした住民らが抗議活動を起こし、軍兵士が派遣される騒ぎも起きていた。
「ゴミの川」は4カ月前、複数の住宅用建物近くの場所を間に合わせのゴミ捨て場としたのがきっかけだった。行政当局が対策を打ち出せない中で、ゴミ袋が増え続ける結果となった。
周辺住民は悪臭や不快な光景に悩まされる他、有毒物質が原因の目の痛みなどの健康障害を懸念。降雨の場合、有毒物質が地下水に染みこむことも心配している。猛暑が続く夏になれば問題がさらに悪化することへの不安も抱えている。
この中でロシアへのゴミ輸出計画を提案した英国企業と契約した際は、事態解決の道筋も見えていた。しかし、計画はロシア側と合意した最終期限までの書類手続きが終わらずご破算となっていた。輸出計画に代わる方策は現在ないという。
レバノンのゴミ処理危機は同国で続く政治的な沈滞に起因する数多い問題の1つとなっている。同国は広範な宗派勢力を抱え、政治的権限などは各宗派間で比例して分け合う慣例が定着している。
議会では各派間の対立が続き、2014年の5月以降、新たな大統領を選出出来ない事態となっている。水道や電力供給のサービスも悪化し、汚職の告発も多発している。
レバノンはまた、内戦下にある隣国シリアから退避してきた100万人以上を救援する負担も抱えている。