昨年暮れ、相撲協会の八角理事長(52)がまだ、「理事長代行」だったころの話だ。
それまで協会内部の事務方を一手に仕切り、パチンコ業者との契約の際に裏金を受け取った「裏金顧問」が、ある会社の債券を70億円分購入しようとしていたことが露見した。
仮に、その企業が倒産しようものなら、債券は紙クズになる。そもそも70億円もの大金を投資につぎ込むこと自体に疑問を抱いていた八角理事長代行は、裏金顧問に説明を求めた。
すると裏金顧問は、強い口調でこう言った。
「法律で決められていることだ。内部留保がこんなにあると受け取られてしまう。内閣府にもスポーツ庁にも指導されている」
そして、八角理事長代行をせかすように続けた。
「12月18日の理事会までに社債を買わなければならない。とにかく早くしないと……」
疑心暗鬼になった八角理事長代行は内閣府とスポーツ庁に出向いて問い合わせたところ、「そんなことは一切、言っておりません。協会が決めることです」と、担当者はかぶりを振った。裏金顧問はつまり、ウソをついて、協会に70億円分の債券を買わせようとしたことになる。八角理事長代行はもちろん、これを阻止した。
■ウソ八百を並べ立てて逃げ切りも…
裏金顧問はパチンコ業者との契約に関してもウソをつきまくっている。
4年前、理事をまとめるという名目で、業者との間に入った代理店関係者から500万円を受け取り、後にその事実が週刊誌上を賑わせた。裏金顧問は「カネは返した」と主張。裏金顧問とグルの危機管理委員会・宗像紀夫委員長(74)も「カネは返したから問題ない」と訳の分からない理屈でおとがめなしに。宗像委員長はさらに理事会で「(裏金顧問は代理店関係者に)カネを渡した形をつくりたいから、形だけ預かって後で返して欲しいと言われた」と説明したらしいが、これらは明らかなウソっぱちだ。
本紙は現金授受の一部始終を収めたDVDをチェックしたものの、代理店関係者は「後で返して欲しい」とはひと言も言っていない。それどころか裏金顧問は紙袋から帯封のしてある5つの札束を取り出して金額を確認しながら、「絶対、これ、バレんようにしてくれる? 北の湖に……。中止せな、つぶさなアカンようになるので」と、口外しないようクギを刺している。
その場で、代理店関係者から期間が足りずに500万円しか用意できなかったと説明を受け、さらなる裏金が必要ですよねと念押しされると、「別に小分けでも構わんですよ」と答えている。「返す」どころか、裏金を歓迎しているのだ。
実際、代理店関係者も、日刊ゲンダイ本紙の取材に「(カネは)返してもらっていない」と答えている。
「裏金顧問のカネに関する話は枚挙にいとまがありません」と、さる親方がこう続ける。
「裏金顧問が協会に来てからというもの、必要に迫られていないムダな工事が山ほど行われているのです。例えば国技館の3階まで伸ばしたエレベーターには5000万円がかかったそうですけど、実際に使う人はほとんどいません。さらに正面の木戸、チケット売り場を50センチだけ拡張する工事にも5000万円、これによって防火シャッターを直す工事が必要になって1600万円かかったらしい。国技館地下の貯水設備もなぜか早急に改修が必要と8000万円がつぎ込まれたといいます。南門の小屋を8000万円かけて建て直す計画まであったのですが、八角理事長が阻止したと聞いています」
裏金顧問はウソをついて70億円分の債券を購入しようとしたり、親方連中が「ムダ」とクチをそろえる工事に巨額の費用を投じたりする。なにしろ業者から裏金を受け取りながら、ウソ八百を並べ立てて逃げ切った人物だ。巨額の債券を購入しようとしたことや数々のムダな工事も思惑があるとみるのが自然だろう。
この裏金顧問と一緒になって相撲協会を牛耳ろうとたくらんでいるのが貴乃花理事(43)だ。前出の親方が言う。
「野心の強い貴乃花は一日も早く理事長の椅子に座りたいし、カネも欲しい。莫大な借金を抱え、首が回らないといいますからね。そこへいくと裏金顧問はカネ回りがいい。カネと権力が欲しい貴乃花と、権力を利用してカネ儲けがしたい裏金顧問は、くっつくべくしてくっついた。危機管理委員会の委員長を務める宗像外部理事、1月下旬の理事候補選で理事になった山響親方(45)も彼らとグルです」
年頭の挨拶で相撲協会全職員を前に「協会を破産させる勢力とは断固戦う」と話していた八角理事長は1月下旬、裏金顧問を解雇した。