地方選、与党惨敗で政策の行方不透明に
台湾全域の22の直轄市・県市の首長と各地方の議員などを選ぶ統一地方選挙の投開票が11月29日に行われた。与党・国民党は中心都市の台北をはじめ、6直轄市の市長選でポストを4から1に減らすなど歴史的惨敗を喫した。一方、最大野党・民主進歩党(民進党)は、13の県・市長ポストを獲得し躍進した。今回の地方選挙は馬英九政権2期目の中間評価となったが、賃金水準の停滞に物価上昇、相次ぐ食の安全問題で蓄積していた不満が表れた形。惨敗を受け、江宜樺・行政院長が辞任を表明しており、今後の政策遂行がさらに停滞する恐れが出ている。
国民党は、台北市で党中央委員の連勝文候補が無所属で出馬した医師の柯文哲候補に24万票超の大差をつけられ敗戦。台中市と桃園市で現職市長が民進党候補に敗れたほか、ハイテク企業の多い新竹市、中部の嘉義市などでも相次ぎ市長ポストを失った。直轄市で唯一勝利した新北市でも民進党候補に猛追され、逆風が吹いた。
今回の選挙で県・市長の勢力図は、国民党が15から6への大幅減。一方6だった民進党は13と倍増した。無所属首長は台北市、花蓮県、金門県の3県・市に増えた。
地元メディアは、馬政権に対する市民の不満が国民党惨敗につながったと総括。業績が好調な一部の大企業を除き上昇が鈍い賃金、電気料金の値上げや不動産価格などの上昇で景気回復の実感がない現状への不満、さらに違法油をはじめとする食の安全問題が追い打ちをかける形で政権批判が噴出したとみる。特定の支持政党を持たない「中間層」の票が結果として無所属候補や民進党候補に大量に流れたと伝えた。
■指導力低下も
江・行政院長は29日夜、大勢判明を受けて会見し、馬総統に辞意を伝え了承されたと述べた。また国民党主席を兼務する馬総統は「国民党支持者を失望させてしまった」と惨敗を受け入れる一方、「ここで立ち止まる訳にはいかず、改革を進めていく」と述べ、今後の政権運営への意欲を強調した。馬総統は、江院長の辞任で各省庁の閣僚を含めた内閣改造を行う予定。
一方、大勝した民進党が今後立法院(国会)などで攻勢を強めるのは必至。現在、立法院では中国との相互の市場開放を進めるサービス貿易協定に加え、中国との交渉をチェックする目的で制定された「両岸協議監督条例」、「自由経済モデル区特別条例」など重要法案の審議が停滞している。これらの案件が今会期中でも成立しなければ馬政権の指導力はさらに低下することになりそうだ。
■具体的な提案が課題
立法院で両岸協議監督条例とサービス貿易協定が通過していないため、対中物品協定の後続協議は停滞。自由経済モデル区は逐条審査を求める野党側の要求で審議日程が遅れている。この他、台湾桃園国際空港周辺に大規模な経済エリアを構築する「桃園航空城計画」の行方も焦点の1つ。桃園県長として日本企業など海外資本の誘致を進めてきた呉志揚氏が落選し、新たに直轄市となる桃園市長には民進党の鄭文燦氏が就任する。鄭氏は当選判明後の会見で「桃園航空城計画は市民参加により公平に進める」と述べたが、具体的な方策は今後の課題。国民党政権が進める対中国など一連の政策に対し、今後具体的な提案を行うことが責任政党として民進党に求められることになる。
香港デモ、台湾・馬総統「平和的手段で合意形成を」
馬英九総統は1日、先月29日に行われた統一地方選挙について、台湾の高度で自由な民主主義を十分に体現できたと述べ、香港当局と「真の普通選挙」を求める同地の市民らに対して、平和的、理性的な手段でコンセンサスを取りまとめるよう求めた。
これはフランスの政党、新中道代表団の訪問を受けた際に発言したもの。今回の選挙は公平で公正だったと話した上で、フランスと中華民国は、自由、法治、人権に関する核心的価値観を共有していると強調した。
フランスは台湾にとりヨーロッパ第4の、台湾はフランスにとりアジア第9の貿易パートナー。今年1~10月の双方の貿易額は前年同期比4.8%増の28億5000万ユーロ(約4220億円)に達しており、農業、文化面での交流も盛んに行われている。
江内閣総辞職 統一地方選での与党大敗受け
2013年2月の成立から約1年9カ月。2008年に発足した馬英九政権では、2009年9月から約2年5カ月続いた呉敦義内閣に次ぐ長さだが、相次ぐ食品安全問題などで市民の不満が高まっていた。
2016年の次期総統選の前哨戦と位置付けられる今回の選挙で、国民党は15あった県・市の首長ポストを6へと大幅に減らした。これを受け、江行政院長(首相)が29日、引責辞任すると発表している。後任は現段階で未定。
日本の料理人がマグロ解体を実演 和食の魅力をアピール
農林水産省は30日、台北市内で日台の食に関するイベントを開催し、日本の職人によるマグロの解体を披露するなどして、来場者に和食の魅力を伝えた。
会場には約100キロのマグロが用意され、15年以上もの経験を持つ職人の手によってさばかれると、会場に集まった人々は満足そうに刺し身を味わっていた。
また、日本の料理人によって、青森名物のウニとアワビの吸い物「いちご煮」や台湾の宴会料理で、鶏肉をじっくりと煮込んだスープである「仏跳牆」がふるまわれ、日台を代表する味が競われた。
和食は2013年にユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、海外での注目がますます高まっている。本イベントは、台湾の人々に和食の魅力を知ってもらうために開催されたもの。日本茶講座なども開かれた。
台湾で生まれ育った日本人、ルーツ探しの映画公開
中国新聞網によると、日台ハーフの作家・田中実加さんが12年かけて制作したドキュメンタリー映画が、18日に台湾・花蓮県で初公開された。
第二次世界大戦の敗戦により、当時約40万人の日本人が台湾から帰国させられたが、その半数は台湾で生まれ育った「湾生」と呼ばれる人々だった。映画は、田中さんが自らのルーツを探す「湾生」をサポートした経緯を記録したもの。1910年、日本からの多数の移民が移り住んだ日本人村「吉野村」は、現在の花蓮県吉安郷にあたり、台湾各地で巡回上演される予定の映画を初公開する場所に選んだ理由でもある。
田中さんの家で働いていた夫婦も「湾生」で、生前2人のルーツ探しを約束していた田中さんは、自宅を売り払ってルーツ探しの活動費にあてた。その後、田中さんはこれまでの10年あまりで、142人の「湾生」の戸籍謄本や出生記録を入手し、台湾で生まれた証明を探し当てた。「湾生」の感動は、自らのルーツにようやくたどり着いたことから生まれたものであり、そうした感動が田中さんを突き動かす原動力になっているという。
きょう内閣総辞職へ、行政院が午前中に臨時閣議
行政院はきょう(1日)午前、臨時院会(臨時閣議)を開き、内閣総辞職の手続きを行う。対象となるのは政務次長(次官)、行政院秘書長、副院長など81人。
これは11月29日に行われた統一地方選挙で、与党・国民党が歴史的な大敗を喫したことへの対応。なお、内閣総辞職によって両岸関係(サービス貿易協定、商品貿易協定についての交渉)や高速鉄道の財務改革など重要な課題の今後の進展に影響が出ることが予想される。
インド空軍司令官、「中国は2050年までに台湾、モンゴルなどすべての失地を取り戻す」
インド空軍のラハ司令官は先月29日、バンガロールで行われた空軍記念会議で、「中国は2050年までに台湾を取り戻し、日本から釣魚島(日本名・尖閣諸島)を奪い返す」との考えを示した。1日付で環球時報が伝えた。
インド紙ザ・タイムズ・オブ・インディアによると、ラハ司令官は「中国は2050年までに台湾を取り戻し、領有権を争っている南シナ海の複数の島しょを占領し、インドのアルナーチャル・プラデーシュ州(中国名・蔵南地区)を併呑し、日本から釣魚島(尖閣諸島)を奪い返し、ロシアで失った領土やモンゴル国を取り戻す」との考えを示した。
また、インドが直面する地域の安全保障情勢は厳しくなってきたとし、具体的に「虎視眈々と狙っている中国、侵入の機会を伺っているパキスタン、米軍が撤退した後の情勢不安定なアフガニスタン」を挙げた。
このほか、インドのIANS通信によると、ラハ司令官は「中国の平和的台頭を期待してはならない。中国は今、軍事強化路線を大股で歩んでいる。特に猛烈な速さで空軍力を伸ばしており、南シナ海や東シナ海、領有権を争う島しょに対する権益を主張する上で、今後役に立ってくる」と強調した。
台北・マカオ間にLCC初就航へ=タイガーエア台湾が年内メドに1日1往復
今年(2014年)10月末にマカオと台湾の間の航空自由化協定が正式発効した後、両地の間を結ぶ格安航空会社(LCC)の新規就航について注目が集まっていた。
マカオの有力紙「澳門日報」は11月30日、台湾メディアの報道を引用するかたちで、タイガーエア台湾が今年12月末までにマカオ路線に参入、最安値運賃を片道1000台湾ドル(日本円換算:約3800円)に設定する見通しであると報じた。
マカオ政府民航局の報道官によると、タイガーエア台湾からの台北とマカオを結ぶ路線の就航申請があったとし、現在、台湾当局からの技術関連書類の到着を待っている段階とのこと。書類が無事に受理されれば、速やかに就航許可が出るだろうとしている。
マカオと台湾の間を結ぶ路線には、マカオ航空、台湾のエバー航空及びトランスアジア航空の3社が就航している。タイガーエア台湾の参入が実現すれば、両地を結ぶ初のLCCとなる。
タイガーエア台湾はシンガポール航空傘下のタイガーエアウェイズ・ホールディングスが10%、チャイナエアラインが90%を出資する合弁会社で、設立は2013年12月16日。IATAコードは「IT」。同社が台北と成田を結ぶ路線開設を予定しているという報道もある。