李登輝・元台湾総統 選挙惨敗の馬英九総統に辞任勧告の背景
「馬英九は第一に無能。第二に羞恥心がない。このような人間はすぐに(台湾総統を)辞任すべきだ」
こう激しく台湾の馬英九総統を批判するのは李登輝・元台湾総統だ。
馬氏はこれまで李氏を国家安全秘密口座の779万ドルを横領したとして起訴するなど、目の仇にしてきたが、11月の選挙で国民党が大敗したことで、馬氏は国民党主席を辞任したものの、台湾総統職は維持。これに対して、李氏の馬氏に対する積年の恨みが一挙に爆発した形だ。
台湾各紙が報じたところでは、李氏は今回選挙の結果について、「国民党は民心を大きく失った。政策が悪く、指導者が混乱していることが証明されたのだ。馬英九は党主席だけでなく、総統も辞任すべきだ。それが国家の指導者としての責任のとり方である」と指摘した。
李氏は台湾内では「ミスター・デモクラシー」とか「哲人政治家」とも賞賛されている人物であり、日ごろ温厚な李氏が政敵とはいえ、これほどまでに痛烈な批判を行なうのは珍しい。
これには李氏の馬氏への積年の恨み辛みがある。2011年6月、李氏は国家安全秘密口座資金を横領したとして起訴されているが、16年前の外交機密に関する疑惑であり、すでに関係者が起訴され、裁判で無罪になっていたのだ。それなのに、馬氏は検察に指示して、李氏を起訴したのは、嫌がらせとして言いようがない。結局、李氏は裁判でも無罪を勝ち取っている。
さらに、2014年春、馬政権が中国大陸とのサービス貿易協定を強引に進めたことに、学生らが反対を表明し、立法院(国会)に突入し籠城した事件で、李氏は直ちに学生の代表と話し合い、解決策を模索したが、一方の馬氏は話し合いを拒否。力で学生らの運動を封じ込める構えを見せたことに、李氏が馬氏に心底失望したとされる。
また、馬氏は選挙結果を受けて「深く反省している」と述べたものの、中国寄りの政策を変えようとせず、10%の支持率もないのに、いまだに総統の座に恋々としていることについて、台湾メディアも「本当に反省しているのならば、辞任すべきだ」(台湾紙「リンゴ日報」)との論調が強い。
そうした状況の中で李氏が馬氏に「辞任要求」を突きつけたわけで、国民党内でも危機感は強い。実際、国民党の若手のエースで、次期総統の有力候補とみられていた朱立倫・新北市長は国民党の主席選挙には出るが、2016年の台湾総統選挙には出馬しないと表明し、間接的にせよ、馬氏の責任を追及する構えを見せている。
このため、今回の選挙大敗を受けての責任追及が長引けば、「馬英九降ろし」の動きが今後、強まることが予想される。
日本人津軽三味線ユニットが日台友好のために特別公演
津軽三味線ユニットの柴田三兄妹が21日、高雄市で行われるイベントなどで特別公演を行い、日台の友好を深める。
柴田三兄妹は、中山大学(高雄市)で日本人有志らによって行われている東日本大震災支援感謝イベントに出演した後、高雄物産館蓮潭旗艦店の野外広場でも公演する。
同市政府農業局の蔡復進局長は、今回のイベントを通じて多くの市民に文化と音楽の交流を楽しんでもらえればと話している。
台湾、同性婚合法化へ民法改正の審議進む・・中国ネット「素晴らしい!感動した」
中国メディア、環球網の台湾記者が中国版ツイッター・微博は、台湾で同性婚を合法化する民法改正案の審議が進展したことについて伝え、中国本土の多くのインターネット・ユーザーたちの注目を集めた。
微博の書き込みは以下のようなものだった。
台湾の同性愛者の皆さん、おめでとう!!! 台湾で同性婚を合法化する民法改正案が19日、第1読会を通過し、司法・法制委員会での審査に回されました。法案は「婚姻は性別、性的傾向、性別認識を問わず、当事者双方の定めによって行うものとし、同性のカップルも子女を引き取り、養育できる」といった内容です。
この書き込みに寄せられたネットユーザーたちのコメントは以下のようなものだった。
「台湾は本当に、華人社会のお手本だね」
「素晴らしい! 感動した」
「台湾はアジアの光!」
「これが民主だ」
「感激して、言葉が出ない!」
「台湾に行きたいなぁ」
「中国本土もがんばらないと!」
「台湾の人権対策は進歩したな・・・」
「台湾はアジアのナンバー1を目指している!」
「もう統一は望みなしだろうなぁ!」
「アジアで最初に同性婚が認められるのは日本だと思ってた。意外!」
「おめでとう! 本当に愛に性別は関係ない」
国民党次期主席に朱立倫氏=他に立候補届け出なし
台湾の与党・国民党は21日、党主席(党首)選の立候補を受け付けた。新北市長の朱立倫氏(53)以外に届け出はなく、朱氏の当選が事実上決まった。主席選は予定通り来年1月17日に実施し、投票終了後に正式に選出される。
11月の統一地方選での国民党大敗を受け、馬英九総統は今月3日、兼任する党主席を辞任。朱氏は12日に主席選への立候補を表明するとともに、2016年の次期総統選には出馬しない考えを明らかにした。
国民党のホープと目される朱氏は、1998年に立法委員(国会議員)に当選して政界入り後、桃園県長(知事)、行政院副院長(副首相)などを歴任。10年の新北市長選では、最大野党・民進党の蔡英文主席を破って当選した。
高雄メトロの“萌え系”キャラクターイベントにファン700人
高雄メトロ(MRT)は20日、同社の“萌え系”キャラクター「小穹」(シャオチョン)と「艾米莉亞」(エミリア)のファンミーティングを開催した。会場には700人のファンが詰めかけ、注目度の高さをみせつけた。
駅係員の「小穹」と運転手の「艾米莉亞」は「駅構内や車内では飲食禁止」などのお知らせ看板やポスターに先月から登場した。固定概念を覆す斬新なキャラクターの起用にインターネット上を中心に話題となっている。
ファンミーティングはこの日小港駅付近で開かれた同人誌のイベントに合わせて開催。特製キーホルダーとポスターがプレゼントとして配布されると、わずか30分でなくなった。
同社では今後も同様のイベントを開催して乗車マナーなどを周知したい考え。新たなキャラクターの登場やさらなる関連グッズの販売なども検討しているという。
ハローキティにスヌーピー 巨大バルーンのパレードが開催
今年で9回目となる年に一度の巨大バルーンのイベント「バルーン人形パレード」が20日、高雄市の商業施設「夢時代(ドリームモール)」前で開催された。
会場には台湾ではお馴染みのキャラクター、オープンちゃんやドラえもん、リラックマ、スヌーピーのほか、今年はハローキティやマイメロディなどが加わり、30近いキャラクターのバルーンが登場した。
このパレードは毎年、台湾全土から多くの見物客が訪れる人気イベントで、昨年の参加者は30万人に上ったという。また、前回から開始された夜間展示は今年も行われる予定で、ライトアップされたバルーン人形たちが高雄市の夜を彩る。
台湾に新しい“縁結び”の廟誕生 特製切手も販売
新北市郊外の万里に20日、縁結びの神様をまつる新しい月老廟が建立された。廟内に設置された「恋愛の神様の郵便局」では特製切手を販売し、手紙の“投函”もできる。
同廟は弁財天として知られる金山財神廟を運営する団体が3年の歳月を費やして建立した。縁結びを願う人々には若者が多い点に着目し、伝統的な宗教の中に流行を取り入れている。
おみくじを引く時に使う本来三日月型の神杯や香炉はハート型だ。廟から手紙を送れば、“速達”で成就するようおまじないがかけられるという。このほか、縁結び関連商品も販売する。廟の関係者は、金山、万里の新たな観光スポットになればと話している。
次期南投県長、農業と観光面の発展に尽力する方針示す
南投県の林明シン次期県長は21日、同県政府が行った観光PR記者会見で、県長就任後に農業と観光産業の発展に注力する方針を示し、2年以内に具体的な成果を出したいと語った。(シン=さんずいに秦)
林氏は南投県を農業大国だとした上で、農民の収入を増やしたいと語り、県政府職員らの豊富な経験などを生かして取り組む考えを強調した。
同県は梅の開花シーズンを迎えており、お正月連休には各地で多くの人出が予想される。県ではお花見スポットに24時間稼動のカメラを設置し、インターネット上でいつでも開花情況を確認できるとしている。
台北マラソンに10万人が参加 ちびまる子ちゃんも快走
2014年台北富邦マラソンが21日開催され、世界40カ国・地域から集まった10万人が早朝の台北市内を走った。
大会には静岡県の大須賀淑郎副知事が台湾でも人気のちびまる子ちゃんを引き連れて参加し、大勢の市民らと一緒に3キロを快走した。
同市は2017年のユニバーシアード開催都市に決まっている。カク龍斌市長は、スポーツ大会を通じて市民の健康への意識を高めたいと話し、成功に期待を寄せた。(カク=赤におおざと)
遊んで学べる特別展「ドラゴンボールで科学する」、来年台湾で開催へ
人気漫画ドラゴンボール誕生30周年を記念して今年日本で開催された特別展「ドラゴンボールで科学する!」が、2015年1月24日から台北でも行われることが分かった。
同特別展は、日本での展示内容をほぼそのまま台湾に移植。ドラゴンボールの世界を通して科学の知識や原理について学習できる。また、筋斗雲とかめはめ波の疑似体験も可能だ。
会場は松山文創園区(台北市)。4月6日まで開催される。
次期南投県長、農業と観光面の発展に尽力する方針示す
南投県の林明シン次期県長は21日、同県政府が行った観光PR記者会見で、県長就任後に農業と観光産業の発展に注力する方針を示し、2年以内に具体的な成果を出したいと語った。(シン=さんずいに秦)
林氏は南投県を農業大国だとした上で、農民の収入を増やしたいと語り、県政府職員らの豊富な経験などを生かして取り組む考えを強調した。
同県は梅の開花シーズンを迎えており、お正月連休には各地で多くの人出が予想される。県ではお花見スポットに24時間稼動のカメラを設置し、インターネット上でいつでも開花情況を確認できるとしている。
レゴブロックの「世界遺産展」、台湾で初開催 日本国外2カ所目
台北市内の松山文創園区(信義区)で20日、「『レゴブロック』で作った世界遺産展」が開幕した。
同展は2003年に日本で始まり、これまでに約250万人が鑑賞した。日本国外での開催は2013年7月(香港)以来、約1年5カ月ぶり2回目。
展示されるブロック作品には、ピサの斜塔や日本の富士山など、25カ国・地域の計38カ所の世界遺産を表現したもののほかに、台北101や中正紀念堂など、台湾を代表する建築のミニチュアもある。来年3月1日まで。
きょう日本公開の台湾映画「天空からの招待状」、東京で特別上映会
電源装置メーカー大手の台達(デルタ)電子が19日、自然の大切さを知ってもらおうと、台湾のドキュメンタリー映画「天空からの招待状」(原題:看見台湾)の特別上映会を東京都内で開催した。
この映画は空撮専門のカメラマン、チー・ポーリン(斉柏林)氏が3年間をかけて完成させた全編空撮のドキュメンタリー作品で、台湾の美しい景色だけでなく、乱開発がもたらした爪痕などが克明に記録されている。
デルタ電子は、この作品が伝えているメッセージは同社が長年持ち続けてきた環境保護の理念と一致しているとした上で、近年、気候変動の影響を受け続けている日本で同映画を上映することで、次の世代のために環境を守るよう呼びかけたい考え。
台湾では2013年の公開後、興行収入およそ2億台湾元(約7億6000万円)の大ヒットとなった「天空からの招待状」。日本公開は20日からで、日本語版のナレーションは俳優の西島秀俊さんが担当している。
民進党の県・市長会議、半年一度に
最大野党・民進党は先ごろの統一地方選挙で、22ある自治体のうち13で首長ポストを獲得。20日には同党の県・市長会議を開催した。(写真:CNA)
今回の統一地方選挙で13の県・市の首長ポストを得た最大野党・民進党は20日、「2014年県・市長合同行政会議」を開催した。会議では、同会議を今後半年に一度開催すること、幕僚会議は3ヶ月に一度行うことことで合意。さらに、同党以外の他県・市の首長を全て招くということ。
20日の会議は蔡英文・民進党主席が議長を務め、各県・市の運営、財政収支の計画などについて話し合った。会議後、同党の林俊憲・スポークスマンは、民進党所属の県・市長以外に、今後は共通の理念を価値観を持つ全ての県・市長を招くと述べた。県・市長合同行政会議は各県・市が半年に一度、持ち回りで開催。また、幕僚会議は党中央政策会、シンクタンク、各県・市の代表によって幕僚チームが組織され、3ヶ月に一度開催する。
呂秀蓮氏:陳氏仮釈放なくば28日から絶食
汚職やマネーロンダリングで服役中の陳水扁・前総統は体調が悪化しているとされ、支持者たちは刑務所外治療を求めている。実現した場合は仮釈放に近い措置となる。
呂秀蓮・元副総統は先ごろ、24日になってもなっても陳氏の刑務所外治療が認められなければ、25日よりハンガーストライキに入ると宣言した。しかし、刑務所外治療が打倒かどうかを判断する拡大衣料鑑定チームが依然検討中であることから、呂・元副総統は20日、期限を27日に改め、刑務所外治療が実現しない場合は28日午後4時より、総統府前の介寿公園で絶食して抗議すると述べた。呂・元副総統は大勢の人が自分に続いて絶食抗議を始めるだろうとしている。
新北市萬里に「天使の郵便局」登場
台湾北部・新北市萬里区にある金山財神廟はこのほど、3年かけて宗教と文化クリエイティビティを結合した「萬里情月老廟」を建設した。「月老廟」は縁結びの神様、「月下老人」を祀る廟。新設された「月老廟」は「キューピットの郵便局」とテーマとしており、神に願い事をする際に燃やす「金紙」の炉は大きな郵便ポストの形になっている。
20日午後に正式にオープンした「月老廟」では、ハート型の風船並びに「天灯」(熱気球の要領で空に飛ばす紙製の大きな風船)が放たれた。この「月老廟」は創意に満ちており、本殿に行くまでに「かささぎ橋」(織姫と彦星が年に一度出会う場所)を渡り、ハート型の門をくぐる。本殿の月下老人は金のハート型の屏風の前にいて、香炉の上にもハート型のデザインが施されている。また、神様の意思を尋ねる際に用いる「筊杯」まで異例のハート型。
中華郵政公司と提携し、「愛情速達」、「心のつながる立体切手お守り」など文化クリエイティブ商品も販売される。同廟の代表は、好きな人に伝えたいことを紙に書き、「キューピットのポスト」(実は紙を燃やす炉)で燃やせば愛の願いが神に届くと話している。
韓国メディア、日本だけでなく台湾も敵視?その原因とは
台湾メディアの報道は韓国に対して非友好的なのではないか?韓国メディアは台湾を無視しているのではないか?こうした見方について、台湾と韓国のジャーナリストが議論。台湾のジャーナリスト・白兆美(バイ・ジャオメイ)氏、韓国中央日報の元部長兼評論委員の劉光鐘(ユ・グァンジョン)氏、評論家の呂志翔(リュー・ジーシアン)氏が分析した。
白氏は「ここ十数年、台湾における韓国についての報道は北朝鮮や天災、韓流に関するニュースが中心になっている。スポーツニュースでは韓国に対する感情的な報道やマイナス面の報道が目立つ。一部の台湾人はスポーツで不公平な判定を受けたことに不満を持っており、メディアの報道がこれに拍車を掛けている」と指摘した。
さらに、「日本メディアでも韓国に対する感情的なフレーズが使われることがあるように、台湾対韓国、日本対韓国などという敵対心をあおるような報道は民族感情に長期にわたって染みわたり、簡単には消し去ることができなくなってしまう」と注意を喚起した。
また、台湾と中国に赴任経験のある劉氏は「中国が急速な発展を遂げたことにより、韓国は台湾に対してほとんど無関心だった」と指摘。韓国メディアは台湾の政権交代や大型選挙には関心を示すが、それはこれらが中台関係に影響を及ぼすからだとし、韓国が台湾を知ることは中国を理解するための非常に重要な第一歩だと述べた。
一方、呂氏は「台湾と韓国に関する報道が相互に少ない原因は経費削減という世界のメディア業界における共通の経営環境にも関係がある」と指摘。メディアは本来の使命に立ち返り、公正で客観的な詳しい報道を大衆に伝えることが重要だと語った。
3人は「双方のメディアが感情的で偏った報道を減らし、国民の理解を深める専門的な報道を増やすことによって初めて相互の誤解が解ける」との認識で一致した。
北朝鮮のサイバー攻撃能力は「米CIAに匹敵」!?
金正恩第一書記の暗殺を題材にした映画「ザ・インタビュー」を製作した米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)にハッカー攻撃が仕掛けられた事件で米連邦捜査当局が北朝鮮の仕業であると断定したことで、北朝鮮のサイバー能力が俄然注目されている。
北朝鮮によるサイバー攻撃が取り沙汰されたのは、今から10年前の2004年4月に韓国の海洋警察庁、議会、原子力研究院など政府機関の235のサーバーを含むパーソナルコンピューターがハッキングされたことから始まる。韓国のファン・ジンハ議員が2006年に入手した「(韓国)陸軍情報保護総合発展計画書」によると、北朝鮮のハッカー能力は米国防総省のシミュレーションの結果「米太平洋司令部の指揮統制所を麻痺させ、米本土電子網にも被害をもたらす」ことがわかった。
実際に米国と韓国は2009年7月にその攻撃の標的となった。独立記念日の4日から始まった米国へのハッカー攻撃はホワイトハウスなど8機関にのぼり、その被害はワシントン・ポストなど大手新聞社や銀行など民間企業にも広がった。韓国では7日以後、大統領府や国防省、保守系メディアや銀行が攻撃され、延べ35機関でホームページに接続できなくなった。
特に韓国は2010年からは毎年サイバー攻撃を受け、2011年3月には青瓦台、議会など30の政府機関、金融機関が攻撃を受けた。昨年3月にもKBSとMBなど韓国の放送局やYTNの社内電子システムが一斉に使用できなくなってしまった。
北朝鮮のサイバー能力について2012年10月にワシントンでの軍事関連セミナーに出席したジェームス・シャーマン元駐韓米軍司令官は「北朝鮮が保有している非在来式の兵器の中で注目すべきはサイバー特殊部隊である」と証言し、2013年3月に開かれた米下院軍事委員会では「北朝鮮は韓国軍の情報、産業施設などを同時多発的に攻撃できるハッカー部隊を集中的に育成している」と述べ、その能力は「米CIAに匹敵する水準にある」と証言していた。約2千人から成るハッカー部隊が朝鮮人民軍偵察局傘下の「121部隊(局)」を指していることは今では公然たる事実だが、その実態は不明だ。
北朝鮮は、経済は後進国だが、ミサイルや人工衛星の製作面では先進国である。テポドン・ミサイルが日本列島を飛び越えてきたのは今から16年前の1998年だ。ミサイル発射には高度な電子・通信技術が不可欠だ。北朝鮮が米大陸を標的にするICBM大陸弾道ミサイルを開発していることは、これらの分野で高い水準の情報技術人力を有していることを意味している。にもかかわらず、北朝鮮のITの実態は外部世界には未知数のままだ。
北朝鮮のITはハードウエアと通信インフラは劣悪な状況にあるが、ソフトウエアと軍事情報技術分野では相対的に高い水準にある。その中の一部のゲームプログラムは世界的なレベルにある。
北朝鮮によるコンピューター分野への進出は今から半世紀前に遡っている。1960年代から金日成総合大学と金策工業大学でコンピューター開発研究を始め、1960年代末には「チョンジン―5500」という第一世代デジタルコンピューターを完成させ、続いて1970年代末には「ヨンナムサン1号」という第二世代のデジタルコンピューターを製造している。1982年には日本から輸入した部品で組み立てた8ビット「ポンファ4-1」の組み立て生産を始めたが、人材不足と半導体産業が遅れていたことから限界があった。そのため1985年から優秀な人材を旧ソ連と東欧にコンピューター留学させることにした。
二年後の1987年に国連開発計画(UNDP)の支援の下、科学院傘下の電子工学院研究所にIC回路試験工場を設立し、89年には平壌にIC生産工場を、海州と端川に半導体工場を設立し、93年には平壌大同江区域に16ビットPC生産のためのコンピューター組立工場を建設した。年間3万台の生産能力を有しており、部品は台湾、香港、中国などから調達しているとのことだ。
COCOMの規制によりスーパーコンピューターの導入は規制されているようだが、北朝鮮の軍事用のコンピューターは高性能のコンピューターが活用されていると言われている。ミサイル軌道を調整し、誘導電波を収集し、解読するのに必要なコンピューター装備を開発するのに成功している。
ハードウエアとは異なり、少ない投資で大きな成果を期待できるソフトウェア産業の人力育成と研究機関の設立に特に力を注いできたようだ。1990年には朝鮮コンピューターセンターを、91年には金策工業大学内にコンピューター要員育成センターを設立している。
北朝鮮のソフトウェア開発は保安認識システム、ワードプロセッサー、経営管理、航空交通指揮システム、各種ゲームソフトなど多様な分野で成果を生んでおり、いくつかのソフトウェアは世界的なレベルにあるとされている。ちなみに1998年と1999年に日本で開かれた世界囲碁プログラム大会で北朝鮮の「銀囲碁」が優勝を果たし、プログラムの実力を誇示している。
故金正日総書記は1993年からコンピューター関連機関を何度も視察に訪れ、1996年に科学院を視察した際には外国コンピューター技術導入の必要性を強調し、外国専門雑誌を各研究機関に普及させた。金日成主席死去から6年目の2000年5月に訪中した際には自ら中国のパソコン工場を視察している。
北朝鮮のソフトウェア開発機関には「朝鮮コンピューターセンター」「平壌情報センター」「科学院」「銀星コンピューターセンター」などがある。中でも平壌の万景台区域にある「朝鮮コンピューターセンター」は1千人のコンピューター技術者を有している。「金日成総合大学」や「金策工業大学」「理科大学」などから毎年20~30人選抜採用し、傘下にそれぞれ30余の研究室を持つ6つの下部センターに配属していると言われている。
「金日成総合大学」と「金策工業大学」だけでなく、十数年前からは「金正淑師範大学」でもソフトウェア開発部門の人材育成に力を入れており、数年間で2千4百件の教育プログラムを開発している。金日成総合大学情報エンターは3D(三次元)映像グラフィック技術開発にも乗り出しており、3Dコンピューター画像処理ソフトウェアである「ファリョン2.0」を活用し、米国のタイタニック映画を真似たコンピューターグラフィック技術を集中的に研究している。
今回は北朝鮮によるサイバー攻撃が脚光を浴びているが、実は北朝鮮も2013年3月13日から14日にかけて何者かによるサイバー攻撃を集中的に受け、労働新聞、朝鮮中央通信など北朝鮮の宣伝媒体が運営しているウェブサイトが接続不能となった。ロシアのイタル通信の平壌特派員は「北朝鮮のインターネットサイトが海外からの強力なサイバー攻撃を受けた」と報じていた。
北朝鮮はサイバー攻撃が米韓合同軍事演習「キー・レゾルブ」期間中に行われたことから米国や韓国などの「敵対勢力による仕業」と断定したが、米韓当局は「政府は関与してない」と北朝鮮の非難を一蹴した。
今回の件で、オバマ大統領が北朝鮮への報復を示唆したことで、米朝サイバー戦が熾烈を極める可能性が大だ。