平壌在住のRFAの情報筋によると、ビラや落書きが増えている背景には、金正恩氏が「祖父譲りの残忍な人間」と言われ、評判が芳しくないことがあると指摘。落書き犯を捕まえたい北朝鮮当局は、「筆跡調査」まで行っているという。
「平壌では住民を対象にした筆跡調査が行われている。小学生から70代の老人まで住民のほぼ全てだ」
情報筋によると、筆跡調査は平壌から始まり、平壌近郊の平城(ピョンソン)や南浦(ナンポ)まで広がっている。
4月の初めには、金日成総合大学の近所で次のような落書きが見つかった。
「金正恩政権は残忍な処刑を行っている」
「金正恩は父の金正日より百倍ひどい人殺し」
さらに、今年2月、黄海北道(ファンヘブクト)の沙里院市のある区域党委員会の建物の壁に「米軍歓迎。お前ら(金正恩氏)は出て行け」という落書きが発見された。
当局は、犯人を捕まえるため、落書きされた場所に横断幕を設置。犯人をおびき寄せようとした。
そんなある日、突然、横断幕の影で動く人影が見えた。見張り要員は一斉に飛びかかった。ところが、そこにいたのは怯えた表情の4歳と6歳の女の子だった。両親が仕事を終えて出てくるのを待っていたが、寒くなったので横断幕の後ろで寒さをしのいでいたのだ。
落書き事件を見た北朝鮮住民のなかには、「金正恩に治められるなら米国の植民地になる方がまだマシだ」と極端な不満を口にする人も決して少なくないという。
「金正恩氏は若いから、何か新しいことをやってくれかもと期待したが、この3年間で裏切られた。もはや失望を越えて怒りしか感じない」